二年目の春・5

「ボディ自体はほとんどいじってない。 動力も魔力だからそのつもりでな。 ただAIとソフトウェアは超さんのとは違う。 茶々丸ちゃんをベースに改良した。」

食後横島は所用があると坂本夫妻やタマモ達に告げるとついでに少女達を送ってくると女子寮に少女達を送ったあと、エヴァ宅を訪れて茶々丸の妹二体を渡していた。

この二体のガイノイドは稼働テストすらほとんどせぬまま超鈴音の秘匿拠点の防衛用にと配置されていた物で、AIは茶々丸と違い警備と連絡用の簡易というか制限があるものだったので横島が茶々丸のAIから改良したものを移している。

さほど細かく変えた訳ではないが本来あった超と葉加瀬のガイノイドへの命令権やAIへのアクセス権を削除して、エヴァ・チャチャゼロ・茶々丸・横島の四者に変更するなどはしていた。

横島としては超達を特に警戒してる訳ではないが最低限の対策はしたということになる。


「名前は決めたか?」

「はい、初音と鈴江にします。」

「オッケー、そんじゃ起動するぞ。」

そして茶々丸が散々悩んでいた二人の名前に関しては当初は姉であるチャチャゼロと自分と同じチャチャを付けた名前にしたかったらしいが、エヴァやチャチャゼロに語呂が悪いとか合わないとか散々言われたらしく最終的には茶々という名前から考えた別の名前にしたらしい。


「初めまして絡繰初音です。」

「初めまして絡繰鈴江です。」

名付けも終わり初音と鈴江の二体を起動すると二人はすぐに起動し深々と挨拶をする。

基本AIを茶々丸のものにした結果、かなり礼儀正しい性格になったらしい。


「こちらが我らがマスターのエヴァンジェリンです。」

「マスターってよりお母さんな気もするがな。」

「ソウダナ。 四児ノ母ダナ。」

「お母さん?」

「マスターはお母さん。」

「貴様ら……。」

その後茶々丸はまずは身内のエヴァから覚えさせようと自己紹介を始めるが、横島とチャチャゼロが面白半分にエヴァをお母さんだといい始めると二人はマスターはお母さんだと認識して学習してしまう。

だが年齢の割に恋愛経験も少なく生娘でもあるエヴァは勝手に四児の母にされたことで流石に怒り額に青筋を浮かべていた。


「お父さんは?」

「親父ハコイツダロウナ。」

「うむ、確かにお前達の父親はそいつだな。」

「おいおい。」

しかしそんなエヴァの怒りは純真無垢のままお母さんが居るならばお父さんも居るのではと尋ねた初音にチャチャゼロがお父さんは横島だと指名すると収まり、逆襲だと言わんばかりに横島を二人の父親にしていた。


「お父さん、お母さん。」

「あー、人前では言わんようにな。」

そのまま違うとかそうだとか横島とエヴァの低レベルないい争いがしばし続くが、それを面白そうに眺めるチャチャゼロにデコピンで罰を与えたエヴァと横島はとりあえず人前では決してお父さんやお母さんと呼ばぬように言いつけることで妥協することになる。

あとで少女達に知られたら一悶着ありそうだとチャチャゼロと茶々丸は密かに思うが、チャチャゼロは面白そうだから放置し茶々丸は二人がみんなの新しい家族として受け入れられて欲しいと願うことになる。


「全く、なんでこうなるやら。」

「言イ出シッペハオ前ダロウ。 自業自得ダナ。」

結局横島は彼女も居ないのになんでこんなことにと疲れたように呟くも、エヴァをお母さんだと言い出したのは横島であり本当に自業自得だった。


「どうせなら泊まっていくか? ここなら邪魔は入らんぞ。」

「帰るわ!」

なお帰りがけにエヴァはサディスティックな笑みを浮かべて意味ありげなことを横島だけに聞こえるように囁くが、横島はあからさまに動揺した様子で逃げるように帰っていく。

そしてそんな様子を眺めていたチャチャゼロは結局二人も子供だなと若干失礼な感想を抱きつつ新しく出来た二人の妹を密かに教育しようかと思うことになる。

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