二年目の春・5

それから横島達と茶々丸は一緒に店に戻ると、横島達の帰りを待っていた木乃香達や常連のお客さん達に事情を報告する。

茶々丸が横島に一報を入れた時点で話はある程度伝わっていてみんな倒れた女性を心配していたのだ。


「そっか、タマちゃんお手柄だったね。」

「ちゃちゃまるさんがすごかったんだよ!」

火事にもならずに倒れた女性も無事だったことで店内の雰囲気は一気に明るくなりタマモはみんなに誉められるのだが、肝心のタマモは茶々丸の的確な判断と行動に感動したようでみんなに茶々丸の凄さを熱弁し始める。


「言われてみるといざと言うときにちゃんと判断出来るのってなかなか出来ないかも。」

「動揺しちゃうよね。」

「 わっ、私は……、あっ、当たり前のことをしただけです。」

結果として茶々丸にも注目が集まるが彼女の場合は日頃から人助けなどよくする有名人なので周囲に驚きはない。

ただなかなか出来ることではないので周囲からは当然のように尊敬の眼差しを集めるも、最近は魂が成長しているからか尊敬の眼差しに照れてしまうようであからさまに動揺してしまう。

そんな茶々丸の初々しい姿に誰もが笑みを溢すが、そこに噂を聞き付けた報道部が取材に来ると店は更に賑やかになる。


「ほうどう? しゅざい?」

「タマちゃんと茶々丸さんがいいことをしたということをみんなに知らせるということですよ。」

少し照れたような茶々丸と対称的にタマモは今一つ報道や取材を理解できないようであったが、元々謙遜など知らぬタマモだけに夕映とのどかが分かりやすく説明すると胸を張って報道部の取材を受けていく。

途中で茶々丸と一緒に写真も何枚か撮られたタマモは翌日の麻帆良スポーツの一面にデカデカと掲載されることになり、一部では有名だったタマモもいよいよ全面的な麻帆良の有名人としてデビューすることになる。


「いやタマモの教育とかは特にしてないんだよなぁ。」

ちなみに今回のタマモの活躍により横島も取材を受けることになりタマモの教育やら育て方やら聞かれると、日頃から教育なんか全くしてない横島は返事に困っていたが。


「常連のお客さん達など皆さんが助けてくれてるからですよ。 タマモちゃんのことも皆さん気にかけて頂いてるです。」

「おう、タマちゃんは初めからいい子じゃったよ。」

「そうじゃな、わしらの言うこともよく聞いてくれるしの。」

まさかハニワ兵や木乃香達が教育してるとも言えずにどう話すべきかと答えに窮してしまう横島だが、横島に任せておけばまた要らぬ噂が広まるかと心配した夕映が上手く話を誤魔化す方向へと誘導すると、常連の年配者がその話に乗り上手くタマモの日頃のお手伝いなどを話して話題を流してくれる。

実は開店当初から居る古参の常連なんかはタマモの教育をよく木乃香達がしてるのを見ていて知っているが、横島や夕映達が少し困っているのを見て助け船を出してくれたらしい。

別に悪いことではないのだが横島に関しては若い少女達ばかり周りに居るせいで悪い噂があるのを知っているし、実際に横島と少女達の関係が男女のそれでないのも年配者から見てれば分かることだった。

まあ少女達ばかりか刀子やアナスタシアなど横島に惚れてる女性が多いことで嫉妬したりする面々でもあるが、困った時には助けてくれるのも彼ら年配常連の特徴である。


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