二年目の春・5

「こうして改めて来ると結構たくさんの動物居るのね。」

一方横島の肩車から降りたタマモは抱きつくのがいいとかダメだとかで騒ぐのが理解出来ずに、明日菜や木乃香達など他の少女達の元に駆け寄り動物の話に花を咲かせている。

図鑑やテレビでしか見たことのない動物達はタマモにとって刺激的だったようで、特に図鑑やテレビでは伝わらない匂いはクンクンと嗅いで覚えようとしていた。


「みんなつよそうだ!」

本来は自然の中で出会い時には戦い時には共存する動物達であるため、タマモは本能的に自分の弱さを悟り瞳を輝かせていながらも僅かな対抗心も芽生えさせている。

まあ動物達の方はタマモを気にするまでもなく今日は人間が多いなとか飯はまだかとか、野性というより飼われた動物らしいことを呟いていたのだが。

九尾とはいえその力は未だ眠ったままのタマモの正体に気付いた動物は今のところ居なかった。


「そろそろお昼だけど、みなさんどうしましょう? 私達は人数が多いから早めか遅めにしないと……。」

そのままパンフレットを見ながらあちこちの動物を見て歩く一行であるが、時計が十時頃になるとのどかはお昼ご飯をどうしようかとみんなに問い掛ける。

十人以上の団体なので纏まった席を確保するならお昼の混雑は避けた方がよく、早めにお昼にするならそろそろ頃合いであった。


「あー、早くていいんじゃない?」

「そうですわね。」

まだ動物園は全部見て回ってなく午後は触れあいの出来るところなんかにも行きたいと盛り上がっていて、一行は遅いよりは早い方がいいだろうと早めの昼食にすることにして食事処に向かう。


「こういうとこ久しぶりね。」

「ファミレスとかあんまり行かなくなったもんね。」

一行は近くの食堂で席が空いていたのでそのまま入ったが、横島と外食するにしては普通の食堂というかファーストフードかファミレスのようなところだった。

タマモは日頃あまり来ることのない店に興味ありげに店内をキョロキョロと見渡していたし、少女達もほとんどが久しぶりに来たようである。

横島の店に出入りするようになった少女達は確実にファーストフードやファミレスに行く回数が減ったし、横島と外食する場合は異空間アジト以外だと基本的に夜なのでファーストフードやファミレスに入ることはあまりないのだ。

横島自身はどちらかと言えばファーストフードやファミレスは好きなのだが、昔に比べて食道楽になったこともありどうせならとちょっといい店に行くことが増えている。


「こんな味だったっけ?」

「普通というか、久しぶりだからちょっと懐かしい。」

「子供にウケて大衆的な味となるとこんなもんだろ。 十分美味いよ。」

さて食堂に入りメニューを見てそれぞれに注文するがカレーやハンバーグにパスタなど種類はないが、それなりに定番の物が揃っていた。

味は正直なところ日頃横島の料理を食べてると物足りなさを感じるが、美砂達に明日菜や夕映とのどかなんかは久しぶりに近い大衆的な味に懐かしさを感じてしまう。

すっかり作る側に回った横島は子供向けにして万人にウケる料理をと考えると、それほど悪くなく美味しいといつものように食べていたが。

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