二年目の春・5

「同じのがまだあるんですね。」

「ああ、あっちもいつでも稼働させられるんだが茶々丸ちゃんも忙しいしな。」

そしてこの日の横島の店では夕映とのどかがバイトに入っていたが、話題はこちらも茶々丸の新型ボディであった。

夕映達は茶々丸の変化にクラスメートが騒がないかと心配だったようだが特に問題もなく一日の授業を終えていたらしい。

加えて同時に押収した完成品の同型ボディは茶々丸より小さく小学生サイズのものが二体あり、茶々丸の妹として茶々丸に渡す準備は出来ているものの茶々丸も学校やら家の家事やら忙しいのでゴールデンウィークに入ってから渡す予定となっている。

AIは茶々丸を元に横島が少し最適化しているもののボディは超鈴音製なので特に隠す必要もないのだが、超と葉加瀬が騒ぎそうなので当面はエヴァ宅で使って留守番をさせるらしい。


「そう言えば茶々丸さんの肉体の方はどうなってるんです?」

「そっちも時期に完成するよ。 実は今のボディと外見を同じくしようかと思って少し手を加えてるんだ。 あの耳の部分さえ残せばバレないだろ。」

そして前回異空間アジトで茶々丸が試験的に得た有機ボディの方は、あれから多少手を加えていてそれが終われば完成する予定だった。

そちらは有機ボディの擬装にと超鈴音製の新型ボディと外見を同じくしようとしたのだが、有機ボディの一部に無機物を付けるよりはと有機ボディを任意で無機物に一部変換する機能を搭載しようとしているので本来よりも設計が複雑化してしまって時間がかかっている。

ちなみに有機物を無機物に変換するのは完全にアシュタロスの技術であり、系統でいえばかつてアシュタロスが月面に送ったアンテナと兵鬼を融合させた兵鬼の技術の応用であった。

実は最晩年にドクターカオスが人造人間の高みを目指して同様の技術を使おうとしたが、技術的な難易度の割に必要性が今一つ無かったことでお蔵入りしたなんて裏話もある。

そもそも完全に有機物でボディを作れる以上わざわざボディを無機物に変換する必要がなく、戦闘を想定するにしても人型である以上は別に人が使える武器を持たせた方がいいし防御に関してはすでに究極の魔体のバリアの応用で劣化版だが人造人間シリーズに搭載した前例があり益々ボディ自体を複雑化して変換する機能を持たせる必要が無かった。


「なんというか十分に発達した科学は魔法と区別が着かないと言いますが……。」

「基本というか出発点を魔法にするか科学にするかの違いはあるが俺が知る限りだと到達地点は大差ないな。 ただ寿命が限られてる人間が使うには科学の方が向いてるけど。 どうしても人間だと魔法の系統は技術習得に難があるからな。 超さんのタイムマシンなんかよく出来てたぞ。」

いつの間にか茶々丸が肉体を得るのにも驚かなくなったなと自分達の非常識な環境にしみじみと想いを馳せる夕映であるが、もう秘密とかそんなレベルの話じゃないなと横島の説明を聞きながら思う。

よく考えてみると茶々丸が肉体を得たなんて、親しく製作者の超や葉加瀬以外の誰が信じるのだろうと考えると他は誰も信じないのではとすら思うのだ。

まあ信じられても困るので秘密にはしなくてはならないのは変わらないが。



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