二年目の春・5

「超さん、茶々丸のボディの件はいいんですか?」

同じ頃謹慎中の為に一足先に帰路に着いていた葉加瀬は超に対しこのまま帰っていいのかと問いかけていた。


「押収したボディをどう使おうが学園側の勝手ネ。 ただ稼働テストもまだの試作品故に茶々丸に使わせてテストしてるのだと思うよ。」

実はこの日茶々丸が先日押収した超鈴音製新型ボディで学校に来ていたのだ。

昨日までは従来のボディであったが超と葉加瀬も大人しくしているし、ハニワ兵による新型ボディの調査なども終わったことからとりあえず今日からしばらくは超鈴音製の新型ボディで様子を見ることにしたらしい。


「でも……。」

「廃棄されるよりは有効に活用してくれた方がいいネ。 今後の研究の為に稼働データは後で欲しいが、それも謹慎明けまではどうせ使わないものヨ。」

なんというか自分達が苦労して開発し製造した新型ボディを勝手に使われることに葉加瀬は不満を口にするも、超は廃棄処分よりはマシだと冷静に受け止めている。

現実的に考えて新型ボディの技術やデータは学園にとっても魔法協会にとっても捨て置くには惜しく、誰が主導してるかは知らないが最低限の調査とデータ収集はして当然だと超は考えていた。

近右衛門は超の未来技術を可能な限り秘匿したいようだったが新型ボディの技術は部分的ではあるものの、すでに世に出してる故に隠す必要性はあまりないだろうと超自身は理解しているようだ。

尤も実際にはまだ魔法協会にも技術は渡してなく横島が動かしてるに過ぎないが。


「どのみち私達には当面は学園に協力しながらこれからのことを考えるしかないネ。」

ただ超は茶々丸に早々に新型ボディが渡ったことで近右衛門とエヴァが完全に和解というか協力体制にあることが証明されたとは考えていた。

だいぶ前からエヴァが魔法協会というか近右衛門に協力していたことは推測していたので驚きはないが、明確な証拠があった訳ではない。

オーバーテクノロジーの塊である新型ボディを呪いから開放されてるエヴァに渡すということは、それだけ近右衛門がエヴァを信頼し関係が深いことを証明するには十分だった。


「こんなことなら始めから全部話して協力してもらえば良かったのかもしれないネ。」

本当に今更なことではあるが近右衛門のエヴァや自分達の対応を見てると、リスクが高い計画よりは始めから協力してもらえば良かったと超は珍しく愚痴るように語る。

なまじ歴史という結果を知る故に歴史から導きだした姿で見ていた超であるが、現実の近右衛門は歴史には残らぬ苦労と絶妙な決断をしていた。

無論話したからといって魔法世界を救えたとは思えないが、それでも自身の歴史よりはマシな未来がある気がしてならない。


「超さん……。」

「今になって思うヨ。 何故未来の仲間達は話し合いや共存の道を探らなかったのかとネ。 もちろん相応の理由はあるのだろうが……。」

高畑や近右衛門が獅子身中の虫といっても過言ではない自分達の将来を本当に心配してくれる姿に、超は未来の自分達の仲間達との違いを感じ複雑な心境にならざるを得ない。

考え方によっては平和な世の人間なればそこかもしれないとも思うが、過去ではなく今を生きる一人の人として向き合えばどちらが望ましいかは考えるまでもなかった。

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