二年目の春・4

「タマちゃん始めるよ!」

「うん、まかせて!」

ビデオカメラを片手に店を飛び出した二人だが流石に本格的に新体操をやるなら学校にある道具などが必要であり、この日はまき絵がほとんど毎日持ち歩いてるリボンを使った演技を女子寮の庭ですることにした。

タマモが女子寮に来るのは昨年の末以来でたくさんの人に声をかけられたりとちょっとした騒ぎにもなったが、タマモは特訓するんだと答えながらまき絵と共に一目散に庭に来ている。

一体何をするんだと興味半分に見に着いて来た者も居るがまき絵はそんな外野を気にせず、タマモに声をかけるとリボンを使った演技を始めて撮影していく。


「あ~、まき絵ね。 単純って言うかおバカって言うか。」

一方横島の店では横島が急に新体操のことを調べ始めていたので、のどかや夕映ばかりでなく部活終わりに店に来ていた美砂達にも話が伝わってしまっていた。

美砂と円は友人である桜子をチラ見して話を聞いていたが、タイプ的には桜子を少しおバカにしたような感じかと二人は思うらしい。

天真爛漫なところなんかは似てると言えるが桜子は感性で生きていて何処か横島と似てるが、まき絵は深く考えないおバカな印象が強いようだ。


「それで手助けすることになったと。」

「タマモがやる気になってな。 それにああいうタイプってなんか放っておけないしさ。 新体操は本当知らんのだが。」

また横島が妙なことを始めるのかと期待半分心配半分で話をする美砂達やのどかと夕映だが、横島が何だかんだと言いつつ頼って来たまき絵を放置出来ないのは理解している。

これが男性や大人ならまた話が別だが横島が基本的に未成年の少女達に甘く、特に頼られると嫌とは言えないのは今更なことだろう。

下手するとロリコンかと噂になりそうなものだが、刀子との仲を疑われていたりアナスタシアと名乗る大人のエヴァが居たりと成人女性とも噂になるのでそこまで噂されてはいない。


「手助けするのはいいけど手を出したらダメよ。」

「人聞きの悪い冗談は止めろっちゅうの。 俺がいつそんなことしたんだよ。」

横島が何かを始めると無駄に話が大きくなったり騒ぎになったりするので素直に喜べない少女達であるが、何より気になるのは人の心に簡単に入り込むようなタイプなだけにまた女性が増えるのかと少し警戒もしている。

美砂はそれとなく釘をさすも横島は完全に悪ふざけの冗談だと受け取ったようで全く本気にしてない。

ただまあ元々は木乃香達くらいしか親しい女性が居なかった横島が、美砂達に千鶴やあやかに刀子やエヴァまでもがいつの間にか親しくなってるのだから彼女達の心配もあながち的外れではないのだが。

特にそんな気配のなかったエヴァがかなり横島に好意を抱いてるのを先日の混浴の一件で知っただけに、もしかすると他にも横島に本気になってる女が居るのではと気になり出したようだった。


「まったく、モテないって馬鹿にされるのも嫌だがモテてないのにモテるような扱いをされるのも嫌味にしかきこえんのだぞ。」

「エヴァちゃんと桜子と混浴した癖に。」

ちなみに横島は新体操のことを調べつつもぶつぶつとモテてないのになんでこんな扱いなんだと不満を口にするも、呆れたような円が混浴の一件を持ち出すと固まったように不満のつぶやきが止まる。

もちろん横島には横島の言い分があるのだろうが、女性と混浴したなんて事実は流石に衝撃が大きいようで一時的に思考が止まるほどだったらしい。



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