二年目の春・4

「私は……少し気持ちが分かります。 やっぱり子供っぽいって言われると嬉しくないです。 単純に大人の演技って何かは分かりませんけど。」

横島の意見に揺れ始めるまき絵だが、そんなまき絵の気持ちを代弁するように基本的にあまり他人の話には口を挟まないのどかが自身の考えを告げた。

のどかもまた新体操はさほど詳しくないが教師から見て子供っぽいというか演技が幼稚だと見えるのだろうと考えると、多少なりとも改善の余地はあるのかと思うらしい。


「そう! そうだよ! 何が子供っぽいのか分からないけど見てる人に子供っぽいって思われるのは嫌だよ!!」

「うーん、そっか。 ……じゃあ、まずはビデオとかで撮って自分の演技を見てみるべきかな。 部活とかでやってるか?」

結局子供っぽいというのは顧問の二ノ宮の個人的な意見でありそれをどう受け止めるべきかはともかく、まき絵は客観的に見て子供っぽいと見られること自体が嫌なようだ。

横島は周囲を子供扱いする時があるので今更だが、微妙な年頃なだけに子供扱いされて喜ぶのは見た目が若干コンプレックスな千鶴くらいなのかもしれない。


「ううん。 大会のビデオとかなら見る時あるけど。」

「そんじゃ、そこからやってみるか? うちに家庭用のビデオカメラあるし。 貸してやるからさ。」

「びでおならわたしができるよ! おてつだいする! とっくんだ!!」

最終的に横島はまき絵自身の気持ちを考慮して自身の演技を見つめ直す必要があると判断したらしく、まずはビデオカメラで自身の演技を撮影して客観的に見てみるべきだとアドバイスするが何故かタマモがやる気を出してしまい一緒に頑張る気満々だった。


「ありがとう! じゃあ、タマちゃんとどっかで撮影してみるね!」

横島としてはビデオカメラを貸すので部活で撮影して顧問の二ノ宮とでも見てみればと考えていたのだが、タマモがやる気を出してしまった結果まき絵はタマモと一緒にさっそく新体操の撮影をすると飛び出して行ってしまう。


「横島さん、二ノ宮先生に丸投げするつもりでしたよね?」

「丸投げって言うか、素人が口を挟む問題じゃないというか。」

「まき絵さん期待してますよ。」

この辺りがまき絵がバカレンジャーと言われる由縁でもあり考えるより先に行動に移してしまうタイプなのだ。

まるで嵐が去ったような静けさを取り戻した厨房では横島が飛び出して行ったまき絵とタマモに少し呆けていたが、のどかは流石に付き合いが長いからか本当は横島が二ノ宮に丸投げするつもりだったことに気付いている。

ただ横島は女子中等部というか3ーAのクラスでは、木乃香の料理に明日菜とのどかの勉強など指導者として高くというか若干過大評価されていた。

まき絵は完全に横島に頼って子供っぽいと言われない演技を身に付けるんだとやる気を出してしまい、今更分かりませんとは言えない雰囲気になってしまった。


「俺、魔法とか戦い方とかならともかく新体操って本当に知らんのだが。 とりあえずルールでも確認してみるか。」

正直横島は新体操を見るなんてエロ目線以外なかったようや気がするほどで、のどかの指摘に戸惑いつつまき絵達が帰ってくる前にルールくらいは覚えねばと慌てることになる。



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