二年目の春・4

翌日は四月の最後となる平日だったが月曜を一日挟んではいるものの、修学旅行やら異空間アジトでの花見やらで少々勉強から離れていた少女達は流石に休み明けの気だるさを感じている者が多かった。

とはいえ授業は普通に進むし多少の脱線なんかをしつつも平穏な一日が過ぎていく。


「子供っぽい……。 小学生……。」

木乃香達を筆頭に超鈴音まで本来の歴史とは変わりつつある今日この頃だが、そんな中あまり変わらない日々を送る佐々木まき絵はこの日偶然にも自身が所属する新体操部の顧問二ノ宮が同僚のしずなと話している内容を聞いて落ち込んでいた。

技術ややる気は評価されたものの小学生の演技で夏の選抜大会はダメだろうと言われたことにショックを受けている。

本来の歴史ならばここで翌朝に修業をするネギと出会い、ネギがエヴァに弟子入りするキッカケを作ったりしながら自身もほんの少しだけ成長するはずなのだが……。


「あっ、まきえちゃんだ! どうしたの?」

そんな二ノ宮の話にショックを受けたまき絵は学校を飛び出したが寮に戻る気にもなれずに、寮から近い小さな公園のベンチでなんとなく座り込んでいたがそこはタマモの散歩コースだった。

木乃香達のように毎日ではないがよく店にも来てくれるまき絵はタマモにとっても親しい友人であり、今日は可愛らしい猫の顔が全面に描かれたリュックを背負いチャチャゼロがリュックから頭を出した姿でビッケとクッキや庭の猫達に囲まれながらまき絵に声をかけている。


「ねえ、私って子供っぽいかな?」

いつも元気で笑顔を絶やさないまき絵はタマモも好きでありこの日もタマモは笑顔で声をかけたのだが、珍しく落ち込んだ様子のまき絵にタマモは心配そうな表情をしていた。


「うーん。」

まき絵は何故かそんなタマモに先程の二ノ宮の話をしてしまい思わずタマモに子供っぽいかと尋ねるも、そもそもタマモの大人と子供の判別は本能的なものなので演技が子供っぽいとか言われても今一つ理解出来てない。

タマモの中で大人の女性といえばエヴァや刀子にチャチャゼロなんかが身近に居るが、容姿は関係なく具体的に大人とは何かと言われるとタマモ自身まだよく理解してないのだ。


「夕映ちゃん達は最近大人っぽくなったよね。 なんでだろ?」

まき絵の隣に座り込み尋ねられたことを腕組みしてうんうんと考えるタマモを見ながら、まき絵はふと夕映やのどかを思い出していた。

身体的な成長はさほどしてるようには見えないが、ふとした表情や態度が大人っぽく見えると感じるらしい。

元々のほほんとしている木乃香は表面上はあまり変化はなく明日菜なんかは少し落ち着いたと感じる程度で、周りから見て変化が大きいのは夕映とのどかである。


「ゆえちゃんたちにきいてみよう!」

「えっ!? でも……。」

「だいじょうぶだよ! わたしにまかせて!!」

正直まき絵はタマモに話してると言うよりは半ば独り言のように言葉を漏らしていただけだが、タマモは夕映達ということばから夕映達に聞いてみようと言い出す。

流石にそんな気分じゃないまき絵は戸惑うがタマモは何を考えてるのか、大丈夫だと自信満々に胸を張ると落ち込むまき絵を引っ張るようにそろそろ夕映達が来ているはずの店へと戻っていく。



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