二年目の春・4
「真実などというものがいかに曖昧かということが分かるですね。」
結局店内では横島を始めとした男性陣が話のネタにされからかわれていたが、この日は休みである夕映はカウンターの隅の席で読書をしていた。
アナスタシアという大人のエヴァがすっかり横島の元カノと広まってしまい、エヴァの正体を知らぬ一般人ばかりかあまり事情に詳しくない魔法関係者も信じてる者がいる。
エヴァの存在は麻帆良の魔法関係者では知らぬ者は居ないほど有名だが実は直接会った者は数えるほどしかなく、中には顔を知らぬ者も珍しくはない。
危険視する者や警戒する者や恐怖する者が未だに居る反面、封印されて大人しいんだからと気にもしてない者や本当に伝説の闇の福音が麻帆良に居るの?と半信半疑の者さえ多かった。
アナスタシアバージョンのエヴァを見て本人だと気付ける魔法関係者はほとんどいないだろう。
「そう言えば……。」
夕映自身は以前のエヴァもクラスメートとして少しは知っていたが、自分に関わるなと言わんばかりの雰囲気を持っていた以上の印象はなかった。
それとつい最近には図書館島の魔法関係者専用エリアの司書をしている年配者が夕映達がエヴァと親しいと何処からか聞いたらしく少し教えてくれたことだが、元々麻帆良に来たばかりの頃のエヴァはナギを信じて前向きに待っていたようだと聞いたことがあるらしい。
あまり人付き合いが得意ではないことや、麻帆良の魔法関係者の側がエヴァを恐れて避けたりしたことで孤立はしていたらしいが。
その人は自分達がもう少し受け入れてやっていればこの十年余りの時間が全く別のものになったのかもしれないと、少し後悔にも見える表情をしていたことが印象的だった。
結果としてかつて魔王と恐怖された少女が、今は海外から横島を追い掛けて来た情熱的な女性だと噂をされている。
どちらもそれを真実だと信じてる者が居て世間的にも真実だと見られてるのだから、人の信じる真実なんてものがいかに曖昧でいい加減なのかと夕映は他人事のように思う。
「全く……、あいつらモテない男で好き勝手に想像して遊びやがって。」
そんな思考の渦に少し埋没していた夕映だが、横島は常連の少女達になんでアナスタシアを置いて旅に出たのかと聞かれたり飽きたから捨てたの?などと半ば真顔で聞かれたりと散々弄られていた。
しかも同じような質問をここ最近いろんな人から何度もされてるので横島としてはたまったもんじゃない。
常連の少女達は横島が困るのを知っていて何度も同じ質問をする猛者も居たりする訳だし。
「いっそ開き直ったらどうです? 自分はモテると。」
「そんなことしたら冗談を真に受けたって笑われるだけだろうが。 みんな手のひらを返したみたいに俺なんかとは無理だって馬鹿にするだろ。」
結局横島は疲れたのか夕映の隣に座ると愚痴るように遊ばれてると訴えるが、横島のそんな態度と言動が常連の少女達にからかわれる原因でもある。
夕映はせめてもう少し現状を自覚すべきではと思い意見を口にするが、横島の被害妄想も筋金入りだった。
「普通そんなことしませんよ。」
「あかん。 それはダメなフラグや。」
本当に女が絡むとどうしようもなくめんどくさい人だなと夕映はしみじみと思うが、下手に調子に乗られても嫌なので痛し痒しというのが本音にある。
これが惚れた弱味かと横島を宥めつつそっと溜め息をついていた。
結局店内では横島を始めとした男性陣が話のネタにされからかわれていたが、この日は休みである夕映はカウンターの隅の席で読書をしていた。
アナスタシアという大人のエヴァがすっかり横島の元カノと広まってしまい、エヴァの正体を知らぬ一般人ばかりかあまり事情に詳しくない魔法関係者も信じてる者がいる。
エヴァの存在は麻帆良の魔法関係者では知らぬ者は居ないほど有名だが実は直接会った者は数えるほどしかなく、中には顔を知らぬ者も珍しくはない。
危険視する者や警戒する者や恐怖する者が未だに居る反面、封印されて大人しいんだからと気にもしてない者や本当に伝説の闇の福音が麻帆良に居るの?と半信半疑の者さえ多かった。
アナスタシアバージョンのエヴァを見て本人だと気付ける魔法関係者はほとんどいないだろう。
「そう言えば……。」
夕映自身は以前のエヴァもクラスメートとして少しは知っていたが、自分に関わるなと言わんばかりの雰囲気を持っていた以上の印象はなかった。
それとつい最近には図書館島の魔法関係者専用エリアの司書をしている年配者が夕映達がエヴァと親しいと何処からか聞いたらしく少し教えてくれたことだが、元々麻帆良に来たばかりの頃のエヴァはナギを信じて前向きに待っていたようだと聞いたことがあるらしい。
あまり人付き合いが得意ではないことや、麻帆良の魔法関係者の側がエヴァを恐れて避けたりしたことで孤立はしていたらしいが。
その人は自分達がもう少し受け入れてやっていればこの十年余りの時間が全く別のものになったのかもしれないと、少し後悔にも見える表情をしていたことが印象的だった。
結果としてかつて魔王と恐怖された少女が、今は海外から横島を追い掛けて来た情熱的な女性だと噂をされている。
どちらもそれを真実だと信じてる者が居て世間的にも真実だと見られてるのだから、人の信じる真実なんてものがいかに曖昧でいい加減なのかと夕映は他人事のように思う。
「全く……、あいつらモテない男で好き勝手に想像して遊びやがって。」
そんな思考の渦に少し埋没していた夕映だが、横島は常連の少女達になんでアナスタシアを置いて旅に出たのかと聞かれたり飽きたから捨てたの?などと半ば真顔で聞かれたりと散々弄られていた。
しかも同じような質問をここ最近いろんな人から何度もされてるので横島としてはたまったもんじゃない。
常連の少女達は横島が困るのを知っていて何度も同じ質問をする猛者も居たりする訳だし。
「いっそ開き直ったらどうです? 自分はモテると。」
「そんなことしたら冗談を真に受けたって笑われるだけだろうが。 みんな手のひらを返したみたいに俺なんかとは無理だって馬鹿にするだろ。」
結局横島は疲れたのか夕映の隣に座ると愚痴るように遊ばれてると訴えるが、横島のそんな態度と言動が常連の少女達にからかわれる原因でもある。
夕映はせめてもう少し現状を自覚すべきではと思い意見を口にするが、横島の被害妄想も筋金入りだった。
「普通そんなことしませんよ。」
「あかん。 それはダメなフラグや。」
本当に女が絡むとどうしようもなくめんどくさい人だなと夕映はしみじみと思うが、下手に調子に乗られても嫌なので痛し痒しというのが本音にある。
これが惚れた弱味かと横島を宥めつつそっと溜め息をついていた。