二年目の春・4

「本当、美人よね~。」

「ハリウッドスターみたい。」

そして午後になると店は暇をもて余した女子中高生と年配者達で賑わっていた。

麻帆良がいかに世代を越えた交流が盛んな地域とはいえ、十代も半ばの少女達と年配者が私生活で一緒になることはあまり多くない。

中にはボランティアや地域活動で一緒になる少女達も居るが生活圏は自然と分かれていて、学生がよく行くファーストフードにファミレスなどには年配者はあまり足を運ばないしその逆もまたほとんどない。

まあ横島の店でも当初は年配者なんかは平日の昼間で学生は夕方と土日祝日と来る時間により客層が分かれていたが、いつからかその辺の境が曖昧となり年配者と学生が混雑する店となっている。

そんな店内であるが最近の女子中高生の注目の的はアナスタシアと名乗っている大人バージョンのエヴァだった。


「流石マスター。 海外でも変わらずか。」

「世界各国に彼女でも居たりして……。」

元々エヴァは横島の知り合いで冗談混じりに彼女だとしか言ってないのだが、横島が麻帆良に来る前は海外を放浪というか旅行していたとの経歴にしたことも合間って、アナスタシアは横島が海外で付き合った女で横島を追いかけて来たのだと勝手な想像が事実として広まりつつある。

もちろん横島は明確に否定しているが、エヴァは面白がって否定しないので誤解が真実になりそうな勢いなのだ。


「プライドが高そうなんだけどタマちゃんと一緒に居るとこ見ると見た目に反して優しそうなねよね。」

「なんかこう修羅場にならないのが不思議。」

エヴァ自身は相変わらず年配者にも上から目線というか偉そうな態度を崩してないが、タマモには優しく微笑むので店の常連の少女達の受けが意外にいい。

客観的に見るといわゆるツンデレのようにも見えるからだろう。

まして木乃香達や美砂達など横島と噂がある少女達が親しげに話してるのも常連の少女達の好感度が上がってる原因だが。


「でもさ、男って年取っても馬鹿なのね。」

ちなみにエヴァに夢中になっている年配男性が複数居る店では自分の祖父と同年代か年上の老人が若いエヴァに熱を上げてる姿に、年配男性のイメージがガラガラと崩れてしまい少女達が男って馬鹿だとしみじみと語る姿が最近よく見られる。


「女も変わらんぞ。 うちの婆さんなんか若いアイドルに夢中じゃからのう。」

「うちは演歌のプリンスじゃよ。 別に年寄りだからと縁側で同じ年寄りと茶を飲まねばならんという決まりもないわい。」

なお年配者達はそんな少女達に対し自分達の嫁の話をし女も男も年を重ねてもあまり変わらないと力説するが、若い少女達からすると言い訳にしか聞こえないらしい。


「学園長先生とかも若い子好きなのかな?」

「えー! 学生に鼻の下伸ばしてる学園長なんてやだ!」

そのまま話は二転三転と転がっていくがいつの間にか近右衛門も若い女が好きなのかなどうかという話になり、常連の少女達は好き勝手に議論をしていくも孫娘の木乃香が困ったようになると流石に言い過ぎたと感じたのか冗談だとフォローをしつつ話を変えることになる。
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