二年目の春・4

「東京に来るのも久しぶりね。」

さてこの日の刀子はシャークティと一緒に都内に遊びに来ていた。

学園都市である麻帆良においてそれなりに名の知れた二人は、何処に行っても生徒に会ってしまう麻帆良ではオフの休日でさえ完全に気を抜くことが出来ないという本音がある。

教師は休日も教師として見られるし、まさか休日だからと教師としての立場を放棄することも出来ない。

まあ日々の日常生活くらいならばそれほど負担にはならないが、時折麻帆良を離れて羽を伸ばしに来るのは一般教師も魔法教師も同じであった。


「そう言えば貴女、闇の福音とよく会ってるみたいだけどどうなの?」

午前中二人はぶらぶらとウインドウショッピングをしているが服を見るよりもおしゃべりをしている方が多い。

おしゃべりの内容は日々の愚痴やら噂話など案外女子中高生と変わらぬ内容だったが、シャークティはふと最近魔法関係者で噂になっている話を持ち出す。


「どうって。 取って食われる訳じゃあるまいし。 なんとないわよ。 それに付き合ってみると意外と人情家で優しいくらいよ。」

近右衛門の孫娘に魔法が知らされたにも関わらず魔法協会には所属させずに小飼の刀子や高畑を付けているのが協会内で噂になっているのは今さらだが、最近エヴァが横島の店によく出入りして刀子や木乃香と一緒に食事したりしてる姿がよく目撃され噂になっているようだった。


「へ~、あの闇の福音が人情家ねぇ。 ああ、そういえばタマモちゃんが散歩に連れてるのって彼女の従者なんでしょう? 言われてみればなんとなく納得する気も……。」

麻帆良においてもエヴァの立場は相変わらず微妙で上層部はある程度エヴァのことを知っていて手を出さない限りは危険はないと理解はするも、メガロメセンブリアの謀略もあり半ば都市伝説のような悪党との噂があることに変わりはなく危険視する者や怖れる者は中堅から末端には存在する。

ただそんな噂や空気が実は最近変化してきていて、その一番の原因はタマモにあった。

雨の日以外はほぼ毎日チャチャゼロと猫達と楽しげに散歩する姿は当然ながら地域住民に見られているし魔法関係者にも見られている。

そして最近に至ってはエヴァ本人が大人の姿で横島の店に出入りしては一般人の年配者と囲碁や将棋をしつつ笑顔まで見せているのだから、そんな姿を見たり噂を聞いた魔法関係者からしたら天地がひっくり返ったように驚いた者も少なくない。


「他所だとどうか知らないけどこの国だと昔から人外ともそれなりに共存してるから。 関東だと向こうの影響があるからすぐに警戒したがるけど。」

まあ現状のエヴァがイコール悪い存在ではないと変わった訳ではないが、少なくとも噂とは違う存在だとは認識されつつあるしエヴァの噂や伝説の大半はメガロメセンブリアから流れて来た情報なのでまた裏には何か訳があるのではと考える者も居た。

過去には赤き翼まで嫌疑をかけて指名手配したし近右衛門のことは現在進行形で独裁者だと言う国なので、麻帆良では今一つメガロメセンブリア発の情報の信用度は低い。

加えてエヴァと高畑が元々親交があるのもそれなりに有名なこともエヴァを再評価する動きに繋がっている。

以前ならばそれなりに冷静な判断が出来る関係者は危険性はないと理解していた程度だったが、最近はその流れが麻帆良の魔法関係者にまで広がったのが現状だった。

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