二年目の春・4

「うむ、現状は概ね良好か。」

「はい、元々我々にはあまり含むところはありませんからね。」

横島の店で朝食を済ませた近右衛門は魔法協会本部にて朝一で来た幹部の一人から関西との協力について報告を受けていた。

関東と関西の間で進められていた東西協力は出来ることからと一部ではすでに始まっていて、機密を除く一定の情報の共有や地方における協力も段階的に進む予定だ。


「一部からは和解をするならメガロメセンブリアともするべきではとの話も出てますが、こちらはあまり広がりを見せることはないでしょう。 ヘラス帝国は我々が思う以上に友好的ですから。」

若年層は今一つピンと来てないようだが二十年前の東西の争いを知る層からは、二十年もの月日を経ての和解に感慨深いものを感じる者も少なくない。

現在麻帆良は他の魔法協会に比べると順調だが、国家や国内の魔法組織や集団との協力体制があまり整ってないのは国際的な麻帆良の魔法関係者の間では懸案事項として何度も話が出ている。

話し合いが不可能な妖魔などの闇の存在や他国の魔法組織の暗躍など魔法協会が相手にせねばならない敵はそれなりに居て、関東も関西も国内ですら地方になんかには手が回らないのが現実である以上協力は必要不可欠だった。


「そっちは当面は現状維持じゃな。 連中のつまらん工作のせいで苦労しておるしのう。」

ただ関東魔法協会内からはそろそろメガロメセンブリアとの和解も必要ではとの声も決してない訳ではない。

特に中堅から末端にかけてはそんな意見もあり帝国ばかりではなく連合とも交流はするべきだとの意見もそれなりにあるが、それはメガロメセンブリアの実情をあまり知らぬ者に多い意見と言える。

二十年前の一件以降現在に至るまでに東西の争いを煽るような工作やら、海外で日本人魔法使いへの嫌がらせ紛いの工作やら散々やられた過去があった。

特に十年ほど前に関東魔法協会のメガロメセンブリアとの融和派の人間が関係改善の為にとメガロメセンブリアの活動に協力した際に、あえて危険な死地に赴かせ犠牲にした件などが今もメガロメセンブリアと関東魔法協会の間の大きな凝りになっている。

加えて関東魔法協会が現在魔法世界で交流しているヘラス帝国やアリアドネーでは、一介の魔法協会である関東魔法協会を魔法世界の小国の国家と同等の待遇をしていて人材交流や情報交換など積極的に進めていた。

まあ元々魔法世界人が大半の両国では地球側に野心を持てないとの事情もあり、あくまでも情報や技術などの交流が目的なためと割り切っているからこその待遇だろうが。

ただまあ事情をよく知らない魔法関係者からすると自分達を当たり前のように下に見てまるで属国でも扱うようにも見えるメガロメセンブリアと、国家待遇のヘラス帝国やアリアドネーではどちらに好感を持てるかは明らかだった。

近右衛門としてもヘラス帝国やアリアドネーが麻帆良に過剰に手を出せないことを理解すればこそ交流を進めている。

正直なところ内情はメガロも帝国もアリアドネーも大差なく決してヘラス帝国が人道的で素晴らしいという訳ではい。

しかし互いに利害が一致してる強みは麻帆良にとっても両国にとっても大きかった。



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