二年目の春・4

「かつおってこんなに美味しかったんですね。」

「もうちょい漬け込めばもっとよかったかもな。 ただ新鮮な鰹だからこれでも美味いけど。」

その後仕込みが終わると店を開店する前に朝食にするが、朝食にと用意したづけ丼は特製のタレが鰹に程よく染み込みほかほかの炊きたてご飯には最高だった。

朝ということで少しあっさり目に味付けにしているので、ばくばくと頬張るタマモとさよの向かいではのどかが予想と違う味だったのか少し驚いている。

元々鰹は鮮度の落ちが早いことや少し癖があるので鮮度や調理法での味が顕著に変わるのかもしれない。

ただ横島もそんなに鰹に詳しい訳でも調理経験があるわけでもないので、少し改良点を考えつつもやはり新鮮な鰹は美味しくお代わりしていた。


「あとこの出汁をかけて出汁茶漬けにしても美味いぞ。」

薬味に関してはネギやミョウガに大葉に胡麻や海苔などいくつか用意していて好みに応じて加えながら食べている。

横島は二杯目には予め用意していた出汁をかけて出汁茶漬けにしていたが、他の木乃香達とタマモは半分ほど食べて出汁をかけていた。

男性であり太る心配のない横島はともかく木乃香達なんかは朝から早々ご飯を何杯も食べれるはずもなく、づけ丼一杯と他にも試しにと作った鰹のおかずを食べるとお腹いっぱいになっている。


「おじいちゃん、ええところに来たわ。 今日は初鰹があるんよ。」

そして朝食を終えた横島達は店を開けるがこの日は祭日な為かサラリーマンなどの出勤前の社会人は少なく、代わりという訳ではないが近右衛門が朝食に訪れていた。


「それはいいのう。 そう言えばワシも今年はまだ食っとらんわい。」

孫娘がイキイキと働く姿に近右衛門は朝から幸せな気持ちになりつつ、勧められるままに鰹のタタキ定食を食べ始める。

店内は早朝な為かまだ学生などの若い人は少なく、部活などに行く前に軽く朝食を食べに来た少女が何人か居るくらいだ。

ただ最近は年配者が店によく集まるので、年配者達が早くも店に来ては朝食やコーヒーなどを頼み馴染みの相手と囲碁や将棋を始める者も居た。

まあ彼らのお目当てのエヴァは朝は早くないので十時頃にならないと来ないのだが。


「おじいちゃん今日も仕事なん? 無理はあかんえ。」

祭日のこの日も近右衛門はいつもと同じ服装で休日という様子はない。

タマモは暇なのか近右衛門の隣に座るとニコニコと近右衛門が食べる姿を眺めていたが、木乃香は相変わらず働き過ぎである近右衛門を心配そうにしている。

老化を止める魔法薬を飲んでるし、実は最近になって木乃香が心配するので医療ハニワ兵による健康診断も近右衛門は週に一度受けていた。

だが健康と寿命の心配が減ったからか近右衛門の仕事はあまり減ってなく、そこを木乃香は気にしているのだ。

明確には仕事を部下に任せることは増えているし土偶羅のサポートも入っているので昔に比べるとそれなりに変わってはいたが、超鈴音の問題など近右衛門でなくては出来ない仕事も増えているので木乃香から見ると仕事を減らしてるようには見えなのが現実になる。

まあ近右衛門としては超鈴音の問題も一段落したし、今後は少しはゆっくり出来たらいいなと考えてはいたが。

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