二年目の春・4

「おはようございます!」

一方仕入れに向かった横島とタマモは朝市や市場を回り食材を買っていた。

主な仕入れ先は雪広グループからになっているものの、旬の食材や地元の野菜なんかはこちらから買うことも多い。

そんな二人はちょうど市場に来ていたが、すっかり朝市や市場の人達と顔馴染みになっているタマモはいつものように元気いっぱいに挨拶する。

朝市や市場の関係者には毎朝来るタマモの笑顔を楽しみにしてる者も少なくない。


「今日は鰹なんてどうだ? いいの入ってるよ。」

「ほんとっすね。 しかも安い。」

ここは正式名は麻帆良中央卸売市場となっているが市場の店はどの業者もその道のプロであり、横島が買う店はある程度決まっている。

横島が市場に毎日通い出したのが昨年の夏頃からなので店の側も横島の好みや買う傾向を理解していた。

実は市場に通い出した当初はどっかの若い見習いか素人かと見られたこともあるが、買う物を見るとすぐに素人ではないと見抜かれたのでここでは意外に舐められたようなことはない。

まあ実際は喫茶店のマスターだと知り驚かれたことはあったが。


「うーん、じゃあ六匹ほど貰おうかな。」

「まいど!」

最近では横島が週末や祝日には木乃香達が居て手間のかかる料理が作れるので割といい物を買っていくことが多く、この日は旬の鰹を勧めていて横島も少し考えてそれを購入していく。


「おっきいおさかなさんだね! うんと、かつおだ!!」

「おっ、よく覚えてたな。 今日は鰹のたたきにしようか。 それとも洋風でカルパッチョとかもいいかな?。」

メインの鰹を決めると調理法を考えながら必要な食材を購入していくが、タマモは日頃から一匹まるごと買う魚にしては大きな鰹に喜んでいた。

ちなみに鰹自体は初めての仕入れではないし、タマモは夕映やのどかが図鑑などをよく借りてきては見せてるので年のわりに動物や魚に植物なんかは覚えているのだ。

どういう訳かタマモは乗り物も魚も見た目が大きな物が好きらしい。


「おいしいものがいい!」

「そうだな。 みんなに美味しい物を食べさせてやらんとな。」

しばし調理法を考えていた横島だが今年は初めての初鰹なので結局はたたきにしようと決めるが、タマモは美味しい物ならばなんでもいいと言っていたのであまり参考にはならなかった。

タマモ的には横島が作る料理ならばなんでも好きなのだろう。


「今日もいい天気だな。」

そのまま横島とタマモは車のトランクいっぱいの食材と共に木乃香達の待つ店へと帰ることになる。

異空間アジトでのお花見でちょっとしたラッキーなトラブルもあり気力を充実させた横島は、この日は朝からやる気をみなぎらせていた。


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