二年目の春・4

それから一行は露天風呂と花見を満喫することになる。

露天風呂を出るとそれぞれ数人のグループが出来て食べ歩きやら花見の出し物やイベント見物に向かった。

ちょっと変わったイベントだと魔法の絨毯による遊覧飛行なんてイベントもやっていて、これはヘリや空飛ぶバスなんかより桜を間近に見下ろせるもので少女達に好評だった。

あとは寿司の屋台やうなぎの蒲焼き屋台とか外の世界だとありそうでない屋台もありタマモや桜子なんかは突撃していたし、野点をしてるハニワ兵達も居てエヴァと茶々丸とさよはそちらに参加して茶々丸に関しては今まで部活動として参加はしても飲めなかった抹茶を初めて味わっている。


「ここに来ると浮き世の煩わしいことを忘れそうになるわね。」

そして刀子は刹那と共に静かにお花見を楽しむハニワ兵達に混じってのんびりとした時を過ごしていた。

近くではこの場で焙煎からしてコーヒーをいれてるハニワ兵が居て刀子と刹那はお裾分けのように貰って飲んでいたが、遠くから聞こえるハニワ兵達の賑やかな声を聞きつつ見頃となった桜を眺めてるだけで心から落ち着く一時になっている。

元々刀子は魔法世界の未来どころか魔法協会の将来よりも自身の幸せを求めていたごく普通の女性でしかない。

無論魔法協会や神鳴流には仲間意識はあるし義理もあるので出来る範囲でならば協力はするが、それはあくまでも自身の人生が第一であることに変わりない。

現状では分不相応の問題に関わることになってしまったが、それ故にこんな平穏な一時が何より大切に思えた。


「刀子さんは、その……やはりあの人のことを……。」

「ええ、好きよ。 貴女やお嬢様のような年の子と同じ立場になるなんてって何度も悩んだけど。 結局離れられなかったわ。」

刀子も刹那も日頃からあまり口数が多い方ではないのであまり会話は弾まないが、刹那はふと以前から気になっていた横島との関係を刀子に直接尋ねてしまう。

昨年の半ばから刀子が変わったとの噂は人付き合いの少ない刹那でさえ聞いていたし、その原因が横島で刀子が惚れてるのは見る人が見れば分かることで刹那ですら気付いている。

横島自身は木乃香や千鶴など噂の多い人なので実際横島の女性関係がどうなのかということは相変わらず麻帆良の関係者の注目の的であるが、特に刀子は大人の女性なのでとっくに男女の関係だろうと見てる関係者も意外と多い。

木乃香や千鶴の立場から婿候補だとの噂も根強いが、素性の怪しい横島では刀子辺りが無難だとの失礼な声が魔法関係者にはあったりするのだ。

まさか年端もいかぬ少女達と同じ立場であるとは流石に気付いた者はほとんど居ないらしい。


「それほどまでに……。」

「いろいろ困った人なんだけどね。 側に居たいのよ。」

木乃香を筆頭に今日この世界に来てる人間の半分以上は横島に男性として好意を持っている。

しかし実際横島と刀子や少女達の関係は友達以上恋人未満で何故か恋人をすっ飛ばして家族のような関係に進みつつあるのだから、常識では理解出来ない部分も多い。

そもそも刹那は木乃香に魔法を明かす際に自身のことも明かすことになり横島や少女達と多少の関わりを持っただけなのに、何故このような身内の花見に呼ばれるのかとの疑問も自身はまだ持っていた。


「貴女も気を付けないと離れられなくなるかもね。」

現状では刹那はあくまでも他人事として見ていて自身の立場や状況を少し考えてるようだが、刀子はそんな刹那を見ていて何故か可笑しく感じてしまい冗談っぽく他人事ではないと告げる。

恋や愛どころか家族の温もりすら知らぬ様子の刹那には横島の優しさは刺激が強すぎるのではと刀子は密かに思うらしい。

まあ刹那がどう転んでも横島なら悪いようにはしないと思うので笑っていられるのだが。

しかし刹那にはそんなかつては言わなかったような冗談を言う刀子が少し眩しく見えていた。

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