二年目の春・4

「ちょっと恥ずかしいわね。」

「本当、丸見えじゃん。」

大露天風呂は一行の花見場所から少し距離があり空飛ぶバスで十分ほど行ったところにあった。

そこは少し小高い丘の上にあり桜公園が遠くまで見える絶景である。

脱衣場も景色の邪魔にならないように少し下にあるので三百六十度パノラマが広がるが、言い換えれば丸見えなだけに流石に少女達も恥ずかしいのかバスタオルで体を隠してる者が多い。


「でも凄いわ。 こんな景色あっちじゃ絶対見られない。」

だがハニワ兵が目玉だと自慢するだけあって、外の世界ではあり得ないほど遠くまで見える桜の数々に遠くに見える山々。

何より隠すものが何もない開放感は異空間アジトでなければ決して味わえないものであった。

無論山奥の秘湯などに行けば景色がいい露天風呂もあるが、平地にてしかも見渡す限りの桜を見れる露天風呂はあるはずがない。

あやかの姉であるさやかはそのパーフェクトボディとでも言いそうな体を隠すことなく、同じく隠してないエヴァと一緒に露天風呂に入り素直に景色を堪能している。

プカプカと露天風呂に浮かぶハニワ兵達もまたその景色に魅了されており、最早割りきって楽しんだ方がいいのかと恥ずかしそうにしていた少女達や刀子もそんな周りに流されるように露天風呂に入りゆっくりと景色を堪能していく。


「みんなでくればよかったのに。」

「そうだよねー。」

「……あんたねぇ。」

ちなみに隠すどころかタオルすら持ってないタマモと桜子は未だに横島も来ればよかったのにと不満げであり、タマモに至っては高畑まで連れてくる気でいた。

ただはっきり言えば横島に異性として好意があるメンバーはともかくとして、円と夏美と刹那なんかは本気で横島が来たら多分遠慮しただろうし高畑とも混浴はちょっとと考えてるのはタマモと桜子を除いたほぼ全員である。

もちろん高畑は尊敬するしタマモが考えるように家族のような親しみも感じてはいるが、そもそも年頃になり異性の親とでさえ入浴しない少女達からすると当然のことなのだが。


「貴女達は中学生だものね。 微妙な年頃よね。」

ちなみにエヴァとチャチャゼロを例外として唯一の大人の女である刀子であるが、流石にこれだけ女性ばかりの中で男が一人混浴するのは勇気が必要ではと密かに思う。

加えて少女達が中学生であることも教師として見ると倫理的には問題があるとも言えるし、あまり教師としての立場を振りかざす気はないが混浴を勧めるようなことは流石に今も言えなかった。

まあここの少女達に限らず中学生でも男女関係ですることをしてしまったとの話は女子中等部でも噂程度だがそんなに珍しくはないし、同僚の中には生徒が妊娠なんて結果になり保護者と揉めたなんて話だって聞いたことはある。

だが現実問題として教師は四六時中見張る訳にも隔離する訳にもいかないので一般的な教育をするしかない。

そして目の前の少女達と横島の関係に至ってはいろいろ複雑な部分もあり、一概に大人になってからと言えないのが厄介なところだった。

結局横島という強大な力を持つ存在との一番の繋がりが少女達である以上はいずれより深い関係になることも十分有り得るし、逆に横島が他で深い関係の女が出来たら困るという現実的な問題もある。

少女達の未来と幸せに麻帆良と自分達の世界の未来に、本人が意図せずとも影響を与えうる横島の扱いは想像以上にデリケートで厄介だった。

なんとか丸く収まってくれと願いつつ学生の間は妊娠なんてことは避けてくれと願う近右衛門の本音を理解する刀子は複雑な心境のようだ。



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