二年目の春・4

「すごいね、あすなちゃん!」

「そうね。 いろんな屋台があるわね。」

一方タマモは突然トイレに行きたいと言い出し明日菜と一緒に近くのトイレまで来ていた。

見た感じは日本の桜祭りと大差ないが唯一違うのはゴミが一つも落ちてないことか。

よく祭り会場のトイレなんかはゴミが捨てられていたりするがここではそんな不届き者は居ないらしい。

二人はそのまま腹ごなしに近くを散歩しながら戻ることにするが、やはり屋台の種類は外のお花見とは桁違いで海外の料理らしい屋台や見たことがないような屋台なんかもある。


「あっ、あすなちゃん。 まほらかれーがあるよ!」

「えー? ほんとに麻帆良カレーだわ。」

あまりお腹が空いてないのでとりあえず眺めるだけだったが、特に二人の目を引いたのは麻帆良カレーの屋台があることだろう。

タマモなんかはクンクンと匂いを嗅ぎいつも店で売ってる麻帆良カレーだと喜ぶが、明日菜は昨年の麻帆良カレーがすでに異空間アジトにあることに驚く。


「ぽー? ぽぽっ!?」

「麻帆良カレーをパスタにしちゃったんだ。 凄いわね。」

屋台はさほど大きくないが結構人気らしくハニワ兵達が行列を作っていて、タマモと明日菜は自分達の街の名物がハニワ兵達にも人気なことがなんとなく嬉しく感じる。

メニューもオリジナリティがあり麻帆良カレーパスタなんて物があったりしていて、二人はみんなにお土産にと一つも貰って行こうかと行列に並ぶ。


「おいしいよ。 ね、あすなちゃん。」

「そうね。 横島さんのとちょっと違うけどこれも美味しいわよ。」

十分ほど並んでメニューを見ながら何を頼もうかと相談するタマモと明日菜だが、屋台を営むハニワ兵から味見にと麻帆良カレーを一口ぶんだけ貰うと感想を欲しそうにキラキラとした瞳で見つめられてしまう。

タマモも明日菜も細かい味の批評は苦手ではあったが、ハニワ兵の麻帆良カレーは横島の味とは少し違うものの十分美味しく二人は素直な感想を告げるとスープパスタのような麻帆良カレーパスタを手に入れ再び散歩をしながらみんなの元に戻ることになる。


「へ~、麻帆良カレーまであったんか。」

「うわ~、美味しいわ。 これお店で出したいくらいや。」

二人が戻るとお花見はすでに周囲のハニワ兵達を巻き込み宴会のようになっていたが、ハニワ兵の麻帆良カレーがあると聞くと少女達は元より横島も興味を示しみんなで少しずつ味見をしていくが評判は上々であった。

少しイタリアン風になった麻帆良カレーパスタは割と若者向けの味のようで、横島や木乃香を驚かせて店で出したいとすら二人は話していく。


「こうして料理は世界へと広まっていくんでしょうかね。 麻帆良カレーは世界より先に次元を越えましたが。」

麻帆良カレーは昨年の麻帆良祭で自分達が売り出した想い出の料理であり、それがハニワ兵達に親しまれてることは少女達にとって嬉しくもあり誇らしくもあった。

こんな風に外の世界でも少しずつ味が変わりその土地や人に合わせながら広まっていくのだろうかと麻帆良カレー実行委員会で働く夕映とのどかは考えると、自分達の仕事はスケールが大きい仕事なのかもしれないと改めて感じるらしい。

ちなみに異空間アジトに麻帆良カレーを広めた張本人である横島宅のドジなハニワ兵は、自分が広めたという自覚がないので普通に一緒になり驚いていたりする。

彼は少し天然も入っているのかもしれない。

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