二年目の春・4

有機ボディとなった茶々丸のことで賑やかな夜となった翌朝はいよいよお花見に行くことになるが、横島と少女達が朝御飯も食べずに出発した先に待っていたのはハニワ兵で混み合う駅だった。


「オアフ島駅?」

「あれ? 日本に行くんじゃないの?」

「フフフ、ここから臨時列車が出てるのよ。」

町中に線路を見掛けないので駅があったことにビックリしている少女達が多いが、今回のお花見計画を立てた美砂達とハニワ兵は不敵な笑みを浮かべて中に入れば分かると一行を駅の中へと導いていく。


「駅なんて作ったんだな。」

「横島さん知らへんの?」

「鉄道網を敷いた記憶はないな。 前にも話したが道路とか線路を整備するより乗り物を飛ばした方早いし……ってまさか!?」

異空間アジトの持ち主とも言える横島は相変わらず細かいことは知らないようでまたハニワ兵達が作ったんだなと感心しながら少し近未来的な駅舎に入っていくも、中は普通の駅と変わらず時刻表があり売店やお土産売り場などがある。


「朝食は駅弁だから好きなの選んでね。」

説明不足なため大半の者は訳がわからぬと言いたげだが何か考えがあるのだろうと素直に従い、駅弁を選びキップを発券してもらい駅のホームへと歩みを進めた。


「おおっ!」

「SLだ!!」

ホームで一行を待っていたのは白い煙をもくもくと吐き出し重厚感ある古きよきSLだった。

ちなみに反対側のホームにはゼロ系新幹線が止まっている。


「やっぱこれか? お前ら量産したのか。」

今は最早地方の観光地などでしか見られないSLに少女達は興奮したように駆け寄るが、横島は案内係として着いてきていたハニワ兵に僅かに苦笑いを見せていた。

座席は予約していたようで昔ながらのボックス席を横島達は纏まって取れていて、同じくお花見に行くハニワ兵達で混雑する列車に乗り込み出発を待つ。


「機関車の操縦席見せてくれるでしょうか?」

「見せてくれると思うが、後にした方いいだろうな。」

どうも美砂達はせっかくのお花見だから移動の楽しみたいとハニワ兵達と同じ移動手段で出掛けようと考えたらしい。

横島もせっかくだからとネタバラシは控えて機関車の操縦席を見たいと言い出した夕映やのどかを抑える。

少女達はこれで飛行場くらいまで行くのかなと考えてるようだったが、そんな少女達の表情も列車が出発してしばらくすると驚きというか驚愕に変わる。

汽笛の音と共に蒸気機関車特有の音を響かせながらゆっくりと出発する列車だが、少し走ると車窓の景色がゆっくりと下がって行くのだ。


「ちょっと!?」

「まさか!?」

「そう、飛ぶんだよ。 これ。」

何故かガタンゴトンとレールの上を走るような音は続くが列車はあっという間に上空に舞い上がり、どこぞのアニメの宇宙鉄道のように空を走っていく。

実はその宇宙鉄道をモデルに横島とカオスの思いつき悪のりで作ったカオスフライヤーシリーズの一つだったのだが、正直実用性があまりないのと無駄なまでに蒸気機関車に似せた為に整備なんかが大変なので試作品を一台作って満足して終わったはずのものなのだが。

ハニワ兵達はそれを引っ張り出した上に量産して使ってるらしい。


58/100ページ
スキ