二年目の春・4

「よるのおさんぽもいいね!」

一方タマモは二体のハニワ兵と明日菜と美砂と桜子達三人と共に街中を宛もなく散歩していた。

すでに何度か来ている異空間アジトとはいえ、拠点としてるこの街ですら一歩路地に入ると知らない場所ばかりである。

時間はすでに夜更けであり流石にホテルの周りの店もほとんど閉まっているが、タマモ達は賑わいを求めてかいつの間にか現地のハニワ兵達が集まる飲み屋街のような通りを歩いていた。


「飲み屋がいっぱいね。」

以前一度異空間アジト内で焼き鳥屋には来たことがあるが明日菜も美砂達も他には飲み屋なんて入ったことがないので、通りを散歩する分にはいいが店には入りにくい雰囲気だった。

もちろん周りにはお酒を飲みに来たハニワ兵達なんかで賑わっていて中にはすでに酔っ払ったらしいハニワ兵までいる。


「ハハハハッ!」

ちょっぴり大人の気分を感じつつ飲み屋街を歩き周りのハニワ兵達の注目を集めるタマモ達だが、何処からともなく聞き覚えのある高笑いが聞こえる。


「あれってエヴァちゃんの声よね?」

「あの人もお酒すきよね。」

高笑いの声の主は考えるまでもなくエヴァであり、どうも近くの飲み屋から声が聞こえていた。

チャチャゼロと茶々丸をお供にフラりと街へ出掛けて行ったエヴァの行き先はやはり飲み屋だったらしい。

タマモが行きたそうにしてるので未成年が店に入って怒られないかと少しハラハラしつつ様子を見に行く一行だが、そこはスナックのような店である。


「なにしてるの?」

「コイツラガゴ主人ノサイン欲シガッテナ。 飲ミ比ベシテ勝ッタラヤルッテ飲ミ比ベシタンダ。 ケドゴ主人、大人ゲナイカラ勝ッチマッテナ。」

ただ中はちょっとしたカオスになっていて、ジョッキに並々と注いだビールで飲み比べをしてエヴァがハニワ兵に完勝して半分ほど潰していた光景だった。

チャチャゼロは呆れて茶々丸は酔い潰れたハニワ兵を介抱しているが、話を聞くと魔王の異名を持つエヴァはハニワ兵達の中では一種の憧れの存在らしい。

どういう経路かは知らないがエヴァが魔王であることが異空間アジト内でもそれなりに知られてるようである。


「私にも一杯ちょうだい!」

「ちょっと桜子、未成年なんだからダメだって」

「楽しそうだから私も混ざりたい! それにここはハニワランドで日本の法律は通用しない国なんだからいいのだ!」

なんか人生を楽しんでるエヴァの姿に横島といい魔王ってこんな人ばっかりなのかと少し魔王の存在意義について悩む明日菜だが、突然何を思ったのか桜子が自分もお酒を飲んで混ざりたいと言い出し明日菜や美砂を驚かせてしまう。

ハニワ兵はハニワ兵で普通に桜子にもビールを出してしまうがやはり未成年だからダメだと止めはするも、桜子はここはハニワランドだからいいんだと言って飲もうとしては止められていた。

横島は多分煩く言わないが高畑や刀子も居るので未成年がお酒を飲んで帰ればどう考えても怒られるのが目に見えている。


「いいではないか。 飲ませてやれ。」

「マスター、未成年の飲酒は身体への悪影響もありますが……。」

そんな桜子の突然の行動にエヴァや茶々丸に一緒に飲んでいたハニワ兵達まで巻き込んでお酒を飲ませていいかと激論が始まってしまい、何故か話が盛り上がるもどんどん脱線していき最終的にはタマモに未成年はお酒はダメだよとお説教されて阻止されることになる。

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