二年目の春・4

「まさか未来人だったなんてね。」

「奇しくも私達の世界の外から来たという当初の推測は当たってましたが……。」

一方夕映とのどかとハルナの部屋では同人誌作成の手伝いをさせられている夕映とのどかであるが三人も同じく超鈴音の件を改めて考えていた。

超鈴音の素性に関しては横島と同じ異世界から来たのかと少し疑ったこともあり未来人だと聞いてもあまり驚きはなかったのだが、正直縁もゆかりもない異世界より直接関わる未来から来たことは夕映達の推測より厄介だったと言える。


「目的は何だったのかしらね?」

「ハワイで古菲さんが超さん達に置いていかれた時に横島さんがチラリと話してました。 守りたいものが違うのだと。 超さん達は麻帆良を踏み台にしようとしてるんだと。 具体的な目的は分かりませんが横島さんの言葉から推測するに超さんは麻帆良で魔法を公開しようとしていたのでしょう。」

三人の中で超鈴音の件を楽観的に受け止めているのはハルナであり彼女は単純な好奇心が先行する形で超鈴音の目的を考えるも、夕映はそんな生易しいものではないと表情を険しくして他の少女達が知らない横島がこぼした言葉を今日聞いた情報と繋げて口にしていた。


「そんなことしたら……。」

「さやかさんも話してましたが魔法の公開は世界に与える影響は計り知れません。 超さんの計画をどんなに好意的に考えても既存の関東魔法協会と彼らを支えてる人々が積み上げてきたモノは滅茶苦茶になると思うです。 当然私達も現状のままでは居られないでしょう。」

クラスメートである超鈴音に対して夕映は出来るだけ好意的に考えようとしていたが、麻帆良を踏み台にするという言葉から考えて関東魔法協会はどうなるか分からないし最悪の場合は世界中から袋叩きにされる可能性だってある。

そうすると魔法協会に関わってしまっている自分達の現状の生活だって変わらざを得なくなるのは考えるまでもない。


「一番大変なのは木乃香ね。 あの人が動いた訳だわ。」

夕映の推測にのどかは顔色を悪くして言葉すら出せないでいるが、楽観的なハルナは意外に冷静らしく超鈴音の一番の被害者は木乃香だとすぐに理解していた。

元々勘の良さもあるし洞察力も悪くない彼女はおふざけをしなければマトモな思考も一応出来るらしい。


「百年もあれば世界は安定するでしょうしね、自分の時代の為にこの時代を犠牲にしようとしたと。 話だけ聞くとぶっ飛ばしたくなるわね。」

スリルとサスペンスではないが常に非日常の刺激を日頃求めているようなハルナだが、彼女も実は本心では殺伐とした世界で生きたいなんて全く思ってはない。

自分は安全で快適な居場所でそんな妄想をして楽しみたいだけなのだ。

そういう意味では現状は魔法協会や横島という庇護者の元で優遇されて面白おかしく生きてる毎日なので、わざわざそれを捨てたいなんて本音はあるはずがなかった。

最近は特に異空間アジトのハニワ兵に同人誌を流行らせようと夕映やのどかにも秘密にしながら燃えてるほどだったりする訳だし。

まして友人である木乃香の不幸を喜ぶ訳もなく、普通にぶっ飛ばしたいと口にしてのどかを驚かせていた。

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