二年目の春・4

「おっ、今日はおでんか? いや、うどんか?」

一方この日の横島の店では日替わりメニューとして先日の春祭りで好評だったカレーおでんを提供していた。

何故かカレーおでんのつゆにうどんを入れるカレーおでんうどんが流行ったこともあり、この日は店でもそれに習いうどんも用意していたが結果としてはやはりカレーおでんうどんが好評のようだ。


「先輩知らないんですか? カレーおでんうどんは春祭りで流行ったんですよ。」

そんなこの日もお昼に差し掛かろうとする頃になると豪徳寺と仲間達が昼食をと店を訪れたが、日替わりメニューとして書かれてるのはカレーおでんながらお客さんが食べてる物はうどんが半数近くなため彼らは一瞬困惑してしまう。

常連の女子高生がそんな豪徳寺達に思わず笑い出すとカレーおでんのことを教えてやるが、どうやら豪徳寺達は知らなかったらしい。

まあ流行ったと言っても爆発的なヒットとまでは言えず知る人ぞ知る流行り程度だということもあるが。


「いらっしゃいませ。 なんにします?」

「じゃあ俺はそれにしようかな。 おでんの具は大根とがんもと玉子で。 それとチーズケーキとコーヒーを食後に頼む。」

お昼を前になると地下室からタマモが手伝いに上がって来ていているが明日菜と夕映も混雑して来たので手伝っていた。

豪徳寺達の注文を取ったのは明日菜であるが、若い男性らしく彼らの食欲は旺盛である。

横島の店が喫茶店にしては割安であることを考慮しても結構頼む面々であり、彼らが来ると常連の女子中高生に絡まれたりと店は一気に賑やかになっていく。


「先輩達のおかげで最近しつこいナンパ野郎が減って助かってますよ。」

「ほんとよね。 ちょっと前までは夕方とか女子高エリアを一人で歩いてるとしつこいナンパに捕まったりしたのに最近は本当見かけなくなったもんね。」

「いや、それはべつに俺達がやった訳じゃ……。」

なお元々横島の店では人気者だった豪徳寺達であるが、最近は本人達の予期せぬ形で評価されていて若干戸惑ってもいた。

以前にも少し説明したが困ってる人を助けたりしていたことでそれなりに有名だった豪徳寺達に古菲が加わった結果、彼女を慕う体育会系や格闘系団体の野郎達が自分達も街の人々の為にと半分下心ありで特に女子中高エリアで夕方や夜間に見回りなんかをして主に市街から来ていた悪質なナンパ野郎を駆逐している。

その結果本当に治安が良くなったらしく女子中高生の評判がとてもよく、何故か豪徳寺達の評価が更に上がっていた。

もちろん体育会系や格闘系団体の評価も上がっていて、少し前までは野蛮な野良試合をする連中との評価しかなかった連中が意外にいい人だと評価されるようになり中には彼女をゲットした者までいる。

ただまあ豪徳寺達は下心なんてないし純粋なメンバーが多いので女子中高生にちやほやされると戸惑っているのが実情だが、横島の店の常連はそんな豪徳寺達の反応を面白がって半分からかっていた。


「先輩達はマスターみたいに女の子をとっかえひっかえに遊んだらダメですよ。」

「人聞きの悪いこと言うなっつうの。 いつの間にかお前らの冗談が麻帆良中に広まってるじゃねえか!」

なんというか横島の店では女が強いので流石の豪徳寺達もタジタジだが、彼女達は横島の根も葉もない噂を流して楽しんでる張本人達でありたまたま厨房から出てきていた横島が反論するも口で女子中高生に勝てるはずもなく横島までからかわれることになる。



32/100ページ
スキ