二年目の春・4

「帰って来たんでしたね。」

一方この日夕映が目覚めたのは七時半を回った頃だった。

目覚めた瞬間少し寝ぼけていたのかハワイのホテルかと思ったようだが、見慣れた女子寮の部屋だったことに帰って来たんだと改めて感じる。

同室ののどかの姿はすでになくハルナは夜が遅かったようなので当分起きないだろう。

ベッドから起きた夕映は少し眠気が残る体の目を覚ますように歯磨きや洗顔を始めた。


「それにしても……。」

その後は長い髪を解かして着替えをする夕映はふと気になっている超鈴音のことを思い返す。

横島からは帰って来たら事情を話すと言われたので昨日の夕食時に聞いてみたのだが、結果は数日待って欲しいという微妙な答えだった。

昨夜は刀子も高畑も夕食時に来なかったので説明する人が居なかっただけかもしれないが、麻帆良でかなりの噂になってることを考えると予想以上に問題が複雑になってるのかもしれないとも思う。


そのまま着替えまで終えた夕映は寝てるハルナを起こさぬように朝食を食べに横島の店に出かけるも、少し肌寒い朝の空気に完全に目が覚めたようで歩きながら超の一件について何度目か分からぬ考察を始める。

この二年で超がしてきたのは主に大学部での研究と超包子の二点になるが、夕映には超鈴音が無駄なことをしていたとは思えないので研究や超包子の運営に何らかの意味があったのではとずっと考えていたのだ。


「謎を解く鍵は茶々丸さんもありましたね。」

そしてその意味を理解するには茶々丸の最近の行動も謎を解く鍵の一つではとも考えていて、少し前から異空間アジトに連れて行ったりと完全に身内扱いに変わっていたことも関わっているのではと考えていく。

実のところ夕映は少し前から茶々丸のボディの整備や新型の開発をしてやることになってると、横島本人から聞いて知っている。

以前夕映はエヴァや茶々丸には悪いと思いながらも、超鈴音が作ったガイノイドである茶々丸を異空間アジトに連れて行って大丈夫なのかとこっそり横島に尋ねた時に少し教えて貰っていたのだ。

まあ茶々丸に関しては元々人間でないアンドロイドの一種なのはかなり前から気付いいていたというか、魔法なんかの秘密を知って以降は茶々丸の存在が不自然なことにも気付いていた。

だいぶ以前にも説明したが麻帆良の結界には魔法や不思議なことから意識を逸らすというか認識しにくくなる魔法の効果がごく僅かだが存在し、それが魔法などを信じにくくしていると同時に茶々丸のような存在も注目を集めないようになっているのだがそれは魔法を完全に認知すると効かなくなる程度の効果しかない。

超鈴音のあまりに不自然な技術力とその成果とも呼べる茶々丸を異空間アジトに連れて行けば心配するのは当然だった。


「四葉さんも様子が変でしたし……。」

夕映は何故茶々丸の整備を横島がするのかとあまり詳しく突っ込まなかったことを少し後悔したが、その時はエヴァが気を利かせたのだろうと勝手に解釈して終わっている。

だが現状では修学旅行途中から五月が超と葉加瀬と話もしなくなったので、茶々丸が超鈴音から離れたことも関係あるのではと思う。

しかし正直なところ高畑も横島も生徒や自分達に優しく超鈴音に対しても特別冷たいとは夕映には思えない。

一体超鈴音は何をしようとしたのかと疑問は更に深まるが、そんな夕映でさえ事態をまだ甘く見ていてキツイお説教でもされて終わりではと思っていた。


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