二年目の春・4

「温まるね。」

「ハワイじゃこんな料理なかったもんね。」

さてこの日の夕食は何度か説明してる通り雑炊である。

ひじきの煮物とサラダに自家製のぬか漬けがおかずとしてあるが日頃の夕食としても些か地味なメニューであろうか。

だが修学旅行期間中には食べなかったようなあっさり目のメニューは少女達にも好評で、中でも一から出汁を取った雑炊は絶品だった。


「やっぱりご飯が違うね。」

「土鍋で炊いたご飯が一番や。」

今回の雑炊に使用したご飯に関しても横島の店では日頃から出来るだけ土鍋で炊いているので、地味かも知れないが美味しさが一味違う。

米自体は最高級ブランド米などではないが小まめに精米したての米を仕入れることにより、その味がまた一味違うものになっている。

まあ店にはガスの炊飯器もあり場合によってはこちらも使うが、横島の店の場合は年配者が常連で多いので米には気を使っているのだ。


「何杯でもイケる。」

そしてスープは鶏ガラの出汁をベースに野菜や香草に昆布などの出汁で作った雑炊は澄んだスープになっていて、お客さんに出すメニューでもないので具には出汁を取るのに使った鶏の身をほぐしたものなんかも入れている。

味はあまり濃くはなくダシで食べる優しい雑炊といったところか。

魔法料理でもあるので疲労回復効果もあって修学旅行で疲れた胃腸を癒す料理と言えるだろう。


「帰って来たって実感するね。」

春とはいえまだ夜は寒く温かい料理はまさに体に染み渡るような美味さで好みに応じて最後に薬味と卵を落とすと、それだけで何杯もいけるような美味しさだった。

もちろん修学旅行期間中の料理も美味しい料理ばかりだったが出汁の味で食べるような料理はやはり日本が上であり、もっと言えば食べなれてる横島の味が少女達にとっては精神的にも落ち着くような味なのである。

さらさらっとかきこむように食べるもよしレンゲで味わうもよしという気軽な夕食であった。


「タマちゃん、ゴールデンウィークに何処行くか決めた?」

「ううん、まだきめてないの。」

食後満腹まで食べた少女達は後片付けを手伝ったり明日の仕込みを手伝ったりしていたが、明日菜はタマモにゴールデンウィークの予定を尋ねていた。

たまには異空間アジトではないところに遊びに連れていこうというとこまでは決めたが、行き先は動物園や水族館に遊園地などいろいろありタマモも迷ってるらしい。

なお現在決まっている予定は二十八日の夜から再び異空間アジトに行き向こうでお花見をすることと、来月の三日には麻帆良亭の月一での不定期営業を予定しているくらいか。

花見に関しては美砂達の仕切りで異空間アジトの東北地方にハニワ兵達が最近整備した、桜公園がちょうど見頃なのでそこに行く予定らしい。

ちなみに余談であるが少し前から暇をもて余したハニワ兵達が各地の開発を活発にしていて、異空間アジト内の日本地区には平安や江戸に明治大正など時代劇のような大規模な街が整備されている。

そして一番新しい開発は何故か異空間アジト内に麻帆良を作ろうと盛り上がっていて、どんな街にしようかとハニワ兵達が検討していたりするが。


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