「勝手な約束をして申し訳ありません。」

同じ頃高畑は近右衛門に修学旅行期間中の報告をしていたが、超鈴音を弁護するとの約束など予定外のことを勝手にしたことを謝罪していた。


「いや穏便に連れ帰ったことに比べれば些細なことじゃよ。 よくやってくれた。」

勝手な判断による約束はそれ自体は評価に悩むことだが目的は超達を麻帆良に連れ帰ることであり、最悪は力ずくの強制送還すら考慮していただけに全体としてみると些細なことだと近右衛門は判断する。

現に麻帆良に戻って来た後も逃げる素振りもせず秘匿拠点の確認もせずに、大人しく表の容疑に弁護してくれる人や迷惑をかけた関係者に謝罪したりと冷静に行動している。

近右衛門はそれらを高畑の説得によるおかげだと考えており、正直強硬策を選択せずに済んでホッとしているというのが本音だろう。


「それにしても少し騒ぎが大きくなり過ぎてませんか？」

「うむ、生徒会にも頼んで事態を鎮静化をさせようとしておるのだが……。 かといって表の容疑を隠せば超君に付け入る隙を与えそうだったからのう。」

ただ高畑は麻帆良に戻って来て予想以上に表向きの超鈴音の査察と問題行動が学園全体のスキャンダルになりつつある現状を危惧していた。

願わくば超と葉加瀬にも更生の機会をと考える高畑としては過度な騒ぎは望ましいとは思えない上、あまり騒ぎになると学園全体の教育や責任問題にも発展しかねない。

もちろん近右衛門としてもそこは理解しているが超鈴音の影響力はここで削いでおかねば、今後良からぬ事を企まないとの保証は何処にもないのだ。

それに今回の一件で超と葉加瀬を処分することになった場合には表向きの理由が必要であり、近右衛門としては大学部への立ち入り禁止などの処分を具体的に考えていた結果でもある。


「擁護する声と批判する声は今のところ擁護する声が大きい。 特に大学部の教授が何人か動いておるからのう。」

「正直超君よりは葉加瀬君の方が危険かと。」

「計画が始まる前に止めてこの騒ぎじゃからのう。 頭が痛いわい。」

現状では麻帆良の世論はほぼ二分されているが行動力があり影響力がある大学部の人間が擁護に動いてる関係で、声として大きいのは擁護の意見だった。

批判的な意見の人間は超鈴音と直接面識や関係がなかった人間がほとんどなため、組織的な批判や声高に叫ぶ批判をしてないからという理由があるからだが。

近右衛門は独裁者ではないので世論の意見には耳を傾けねばならないし、大学部の教授などは学園の内外に影響力があるので無下にも出来ない。

まして超鈴音の本当の計画に関しては魔法協会すら秘密にしている為に魔法協会の権限で処分を強行するのも出来ない。

まあ魔法協会でも数人の幹部は超鈴音への査察何か裏があるのではと気付いてもいたが、重要な容疑が支援企業への不正アクセスと資金問題な為に雪広と那波主導で何かをしているとしてもあまり追及は出来ないのが実情だった。

結局超達の処分はそんな微妙な状況の上でせねばならないので難しい問題となっている。

加えて現実がある程度でも見えている超とほとんど見えてない葉加瀬では今後の危険性も問題を起こす可能性も違っていた。

あの二人をどうするのか近右衛門は本当に頭が痛い問題にため息しか出なかった。