二年目の春・4

「タマちゃん嬉しそうね。」

その後さよから遅れること一時間ほどで木乃香達や美砂達やあやか達が店にやって来るとタマモは嬉しそうにみんなを出迎えて、まるでマーキングするように一人に抱きついていく。

例によってお土産を持ってきてくれたが何より少女達の姿を見た時の嬉しそうな表情が、店に居合わせた常連の人達に印象的だった。

お客さんはいつも笑顔で出迎えるタマモだが、やはり木乃香達を筆頭にした身近な少女達は別格なのだと改めて分かる光景である。


「タマちゃん頑張ったんやね。」

「うん! がんばっておみせまもったよ!」

対する少女達の方は抱きついていて来たタマモを抱えてやったり頭を撫でてやることで答えていたが、タマモの笑顔を見て帰ってきた実感を噛み締めていた。

特に木乃香達には行く前の約束である店をちゃんと守ったよと胸を張るだけに、頑張ったことを誉めてやることも忘れない。


「マスターただいま!」

「だから抱きつくなって。 子供じゃないんだから!」

なお横島であるが流石にこちらは普通に少女達を出迎えていたが、例によって桜子がタマモに触発されたように横島に抱きついている。

店ではよくある光景なので常連も含めて誰も驚かないが、中学生にもなって子供のように無邪気に抱きつく桜子には横島も相変わらず困った様子も見せる。

まあ本心では嫌がってないのは誰の目から見ても明らかだが。


「ねえねえ、修学旅行中の超鈴音の様子どうだった? 居ない間に査察入ったのよ。」

「超さんですか? 少し元気がないようには見えましたが、落ち込んだ姿などは元々見せない人ですからね。 どうなんでしょう?」

「私達もついさっき帰りの機内で初めて聞いて。」

それから少女達が戻って来たことで店内ではあちこちで修学旅行中の話に華を咲かせるが、やはりそこには超鈴音の一件の話も加わっていた。

特に最近は大学部に出入りする夕映とのどかは常連の女子中高生から裏事情があるのではと聞かれたり超鈴音の様子を聞かれたりするも、言えることは少ない上に夕映達もよく知らないのが現状である。



「迷惑をかけてすまないネ。 少しばかりやり過ぎたようだヨ。」

一方その超鈴音であるが表向きは学園側からは明後日の月曜の放課後に話を聞きたいと言われているが、高畑からはその前に明日の日曜の午後に近衛邸で裏も含めた話し合いをするからと言われていた。

流石に今日はゆっくり休むようにと言われていたが、超と葉加瀬は大学部の面々や超包子の面々に騒動を詫びる連絡を入れたりと忙しい。

中には弁護するからと言ってくれる大学部の教授などもいて、超の元には励ましの連絡や叱咤激励の連絡も多かった。

正直超鈴音の表向きの問題点も決して軽視していいものではないが、やる気と才能がある学生を育てるのが麻帆良という街なので自身が驚くほど味方が多いことに超は胸が熱くなるのと同時に自分はこの人達を騙し利用しようとしていたという事実からくる罪悪感に苛まれることになる。



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