二年目の春・4

翌日はいよいよ少女達が修学旅行から帰ってくる日だが、麻帆良は土曜であり横島の店は朝から学生達で賑わっている。


「それにしても超鈴音がクラッカーみたいなことしてたなんて意外ね。」

「そう? あの子って人の良さそうな顔して何考えてるか分からないから私ちょっと怖かったわ。」

ただここ数日は超鈴音の研究室や超包子に査察が入った話がすっかり麻帆良中に広まっていて、その話題があちこちで話されていた。

世論は概ね二分されていて超鈴音に好意的あるいは同情的な意見が半数で、後は超鈴音の事業の成功や研究は不正行為の結果かと疑う意見が半数になる。

横島の店でも女子中高生の一番話題になる話で特に横島は超と親しいと言えただけにいろいろ聞かれたりもしている。


「いろいろ言われてるけど何処まで?」

「かなりの部分で本当らしいわよ。 法学部の人とか生徒会に掛け合って確認したらしいもの。」

中には学園側の陰謀だと陰謀論を口にして学園や生徒会に証拠の開示を求めた結果、全てではないが超鈴音の不正の証拠が幾つか開示されていた。

ただクラッキングに関しては不正アクセス禁止法という明確な犯罪である為に扱いが難しいことから証拠は開示されてなく、現時点で被害者が学園関係であることも相まって事実の確認は本人以外にはさせないとのスタンスだ。

不正アクセス禁止法は親告罪ではないので噂を聞き付けた警察から学園側に問い合わせがあったが、未成年の学生であることや被害らしい被害は現時点では確認されてないとの理由で警察へは動かないように頼んでいる。

しかし麻帆良学園の生徒は学園と生徒会が動いた以上は限りなくクロに近いと受け取っていて、規則破りの常習犯だったこともあり超鈴音は実は汚い手段で成功したと陰口が叩かれ始めていた。


「大学部だとさっそく処分の軽減に向けた署名活動始めたらしいけど随分人気があるのね。」

「頭いいと庇って貰えるってのもなんか釈然としないわ。」

ちなみに超鈴音に同情的な意見が多いのは大学部で女子中高生はどちらかと言えば批判的な意見が多い。

工学部などでは早くも親交がある大学生ばかりか教授クラスまで処分の軽減の為の署名活動や働きかけを始めていて、そのあまりの庇いように女子中高生なんかは超鈴音に批判的な意見が増えている。

実際超鈴音を直接知ってる人は批判的な人があまりの居ない反面、よく知らない学生からすると処分される前から大規模な処分の軽減運動をされると同情する気にならないという人の心理があった。

まあ大学生や教授などは超鈴音の才能を惜しみまだ中学生なのだからと研究出来る環境は残してやりたいとの考えから動いてる者も多く、教授の一人などは身元保証人になってもいいと学園側に申し入れまでしていた。

ただ同時に超鈴音が自身の技術ばかりか学園の技術や情報を不正に海外に売り飛ばしたのではと完全に根も葉もない噂まで出始めていて、生徒会が噂を否定するなど過度な騒ぎを沈静化させてようとしているがそれでも疑惑が疑惑を呼ぶ状態は続いている。

あまり言いたくはないが超鈴音が表向き華橋だと言われてることもあらぬ疑惑を増やしている原因であり、学園が他国の産業スパイに狙われてるのは学生ならば知ってる事実なのだ。

特に軍事転用可能な技術などは中国などかなり露骨に狙っているとの噂が以前からあり、超鈴音は中国のスパイではとの声も一部で囁かれ始めていた。

ちなみに麻帆良学園では昔から諸事情により中国本土の留学生をほぼ受け入れてないことから、麻帆良学園に通う中国人はほとんどが香港や華橋なので少なくとも中華系の学生がスパイ行為をして発覚した前例は過去にはないのだが。

結果として超鈴音の問題は麻帆良を二分する論争に発展する兆しを見せていた。


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