二年目の春・4

「うむ、超君達は処分とは別に制約の魔法か記憶の一部消去は必要であろう。 それより木乃香達への情報開示じゃが。」

最終的に超鈴音の処遇は近右衛門預かりとすることになった。

未来へ返すのかはたまたこの時代で更正させるのかは本人達と話してみなくては決められず、今のところ決まっているのは以前に決定した関東魔法協会としては超鈴音に支援も協力はできないということくらいになる。

一応更正させる方向で考えてはいるが超と葉加瀬に関しては正直更正が可能なのか怪しく、チャンスは与えるが状況によっては最悪の結末に向かう可能性もゼロではない。


「今一度確認するが明日菜君の封印は絶対解けぬと考えていいのか?」

「あれは特別なんで主神や魔王が来ても解けませんよ。 この世界じゃ封印に気付くことも無理でしょうね。」

そして話は本題である少女達への対応だが、雪広清十郎は今一度横島に明日菜に施した能力の封印について尋ねる。

容姿はまだ幼い頃の面影があるし名前も同じとはいえ、始まりの魔法とそれの証とも言えるマジックキャンセルの能力さえなければいくらでも切り抜けることが出来るのだ。


「実は記憶の封印が緩んでるんで、ちょっと前に明日菜ちゃんに俺の分霊を置いたんっすよ。 一万分の一なんでたいしたこと出来ませんけどね。 だからどんなに調べても別人に偽装するくらいは朝飯前っすよ。」

横島は封印について以前もあまり深く語らなかったが明日菜の封印は横島の持つ異なる魂の力を複数同時に使ってるので、それこそコスモプロセッサーでも使わなければ絶対に破られない自信がある。

ついでに横島は以前から気になっていた明日菜の記憶に対する対処の為に自身の分霊を明日菜に密かに送り込んでおり、少し前に一度だけ明日菜が過去を思い出しそうになった時に再度記憶の封印をしたことがあった。

まあ完全な自立型の分霊なので横島自身も詳しくは知らないことであるが。


「……ならば大丈夫か。 明日菜君の正体だけは絶対に明かせん。 たとえわしらが将来恨まれてもな。」

分霊の常駐に関しては以前から話していた明日菜の記憶の封印対策として近右衛門と高畑には許可を取ったので近右衛門は知っていたが、いろいろ忙しくて他のメンバーには知らせてなかったので清十郎を含めてみな驚くが横島のやることにいちいち驚いていてはキリがないので話を進める。

明日菜に関しては清十郎は本当の孫のように可愛がったことに今も変わりなく、せっかく断ち切った過去を今更明かすのは反対のようであった。

まあ大人になり自ら過去を求めたら教えることは必要かもしれないが、少なくとも二度と明日菜が利用されることだけはさせないとの強い意思がある。


「超君の件はある程度教えないとダメだろうね。 あの子達は知りたがっている。」

結局超鈴音の件は麻帆良でも少し騒ぎになっているので、少女達が戻ってくれば尋常なことではないと気付かれるだろう。

明日菜の正体に関しては論外だが超鈴音の件はクラスメートとして知りたがっているし、何よりこれ以上隠し続けると大人達との信頼関係にヒビが入る可能性もある。

ただやはり知らない方が幸せなことでもあり、知ればより深く世界の闇を見ることになるのだ。

最終的に何がなんでも知りたいと願えば教えねばならないが、知るリスクを事前にきちんと説明せねばならない。

出来れば少女達の方からまだ早いと引いて欲しいのが大人達の本音だった。



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