二年目の春・4

結局現状でもなお超鈴音に対して厳しく出来ないのはやはり未成年の子供だからであって、逆を言えば子供であるからこそ始末に負えない。

正直なところ魔法協会にもピンからキリまであって人権に煩い欧州の魔法協会ならばともかく、他の地域の魔法協会ならば未成年であっても厳罰に処されるし下手をすれば人知れず始末されても文句は言えないレベルである。

まあ超鈴音が麻帆良で計画したのもそんな国では命が幾つあっても足りないからと言うのもあるだろうし、言い方は悪いが近右衛門の足元を見られてるとも言えた。


「そこまで神経質になるほどのことっすかね? タネのバレた手品は二度と通用しませんよ。 しかも超さんは根が善人なんで非情になりきれてませんし。」

そのまま話は超達の処分の厳罰化に流れようとしていたが、そこでようやく口を開いたのは何故か家庭用のたこ焼き器でたこ焼きを焼いている横島であった。

酒のつまみにと横島が持参した物で、将来を左右する重要な話をする面々を前に淡々とたこ焼きを焼いて配っていたのだ。

たこ焼きはカリっとした表面にトロふわの中には大粒のタコが入っていて、ダシが聞いた味はソースが無くても美味い一品になる。

何人かは重要な会合に何故たこ焼きのような手間のかかる物を持ってきたのかと首を傾げていたが、横島がどっか変なのは今更で注意するほどでもないため流されていたのだ。


「彼女は脅威にはならないと?」

「ならないと思いますよ。 ハワイでの様子を聞けば特に。 」

肝心の横島は熱々のたこ焼きをハフハフと頬張ると自らの意見を口にするが、美神令子の元で数々の経験を積んだ横島からすれば超鈴音の計画は元から甘いと言わざるを得ない。

そもそも彼女の計画の始まりである強制認識魔法に関しても横島は必要なのか疑問であり、別に強制認識魔法などなくても魔法の公開ならば可能だと見ている。


「結局超さんは歴史というカンニングペーパーがあってこそここまでやれた訳ですから、それが通用しなくなるとちょっと賢い子供程度なんじゃないっすか?」

あえて言うならば超鈴音はネギ・スプリングフィールドという英雄に憧れ拘りを持ってしまったが故に、あんなリスクが高い割に無駄な計画を実行しようとしていたのだと思う。


「そもそも俺が超さんの立場なら絶対表には出ませんよ。 情報化の時代ですし影で未来知識と技術を使って魔法の情報をひたすら暴露していけば隠しきれなくなるでしょうしね。」

横島は近右衛門達にたこ焼きを勧めながら自身が超鈴音の立場ならばと少し語るが、もし本気で自身が超鈴音となりそこまでするならば犠牲や被害の管理は諦めるだろうとな考える。

一言で言えば人間には出来るわけがないというのが結論であり超鈴音は致命的な事態などをピンポイントで管理調整したかったようだが、戦争や争いがそんな個人の意思で止められないのは横島が身をもって理解していた。

まあ仮に異空間アジトで土偶羅がしているように致命的な事態の原因となりそうなことを一つ一つ潰していけば理論的には致命的な事態は避けられるのだろうが、あれはアシュタロスの遺産の中枢とも言える世界を管理出来るシステムがあればこそであり人間には逆立ちしても不可能なのだ。


「処分は必要でしょうけどとりあえず制約の魔法や術で未来知識と技術の第三者への伝達を禁止してしまえばさほど問題はないと思いますけどね。」

少し話が逸れたが結局横島が現状で気にしてるのは超と葉加瀬が明日菜の素性や世界樹の地下の封印など未来知識を知ってることくらいで、それを第三者への伝達を禁止してしまえば土偶羅の監視のみで十分だと考えていた。

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