麻帆良祭への道

さて賑やかなままで始まった料理教室だが、基本である包丁の握り方から始まっていた

この辺りは出来る生徒が出来ない生徒を教える形で進んでいくが、とりあえず野菜の皮むきと切ることくらいは出来ないと本番が厳しい

まあ皮むきに関しては皮むき器でもいいが、一応基礎は教えようということになっている


「あんまり力を入れなくていいぞ。 ゆっくり優しくな」

木乃香や超達などが出来ないクラスメートに教える中、横島はぎこちない持ち方の明日菜に包丁の持ち方や力の入れ方を教え始めた

賑やかな空気にピッタリな軽い表情で優しく教える横島だったが、明日菜との距離は今までにないほど近付いている

言葉と見本だけではなかなか上手く出来ない明日菜に、横島は手を握り導くようにやり方を教えるが……

明日菜の顔色は次第に赤く染まって余計な力が入っていく


(ちょっと近いって!!)

さすがに明日菜の手を握り包丁を使う時は、横島も怪我などないように先程までとは逆に真剣な表情に変わる

滅多に見せない真剣な表情をする横島の顔が間近に迫った状況に、明日菜は理由もなくテンパったように緊張してしまう

元々あまり同年代の男性との関わりが少ない明日菜なだけに、実は手を握られた時点で意識してしまったのだ


「もっと力を抜いて……」

「あっ、アスナの顔真っ赤だよ!」

横島と密着した形で教わっている明日菜の顔が真っ赤な事実に誰かが気付き声を上げると、あっという間に騒動になる

明日菜が高畑から横島に乗り換えたとか、明日菜の趣味が変わったとかクラスメートは好き勝手に噂していく


「全然違うわよ!! 勝手な噂しないで!」

「そんな全否定せんでも…… わかってても傷付くなー」

横島と噂された事に明日菜は即座に強い口調で全否定するが、横島はそんな明日菜に対しわざとらしくがっかりした表情を見せる


「うわー、アスナ振っちゃた」

「可哀相~」

明日菜と横島の反応を楽しむようにクラスメートはニヤニヤとしながら笑っているが、当の明日菜は相変わらずテンパったままだ


「ちょっと横島さん!? 違うのよ。 嫌いとかじゃないの!」

クラスメートには横島との恋愛関係を否定しつつ、横島には嫌いじゃないと混乱しながら説明していく明日菜にクラスメートはよほど面白いのか爆笑している

結局いつもの2-Aのノリで家庭科室はあっという間に騒がしくなってしまっていた


「横島さんは悪のりしますね。 分かってて落ち込んだフリをしてるです」

「そうなの?」

「絶対そうですよ」

一方横島と明日菜のコントのような会話を夕映とのどかは遠巻きに見ていたが、夕映は横島が悪のりしてる事実に気付いているようだ

まあ普段から横島は明日菜や夕映達に優しくしてるが、だからと言って恋愛的な方向に持っていかない事実を夕映は知ってるのだから


「でもアスナのあの様子じゃ、絶対ないって訳じゃないみたいね」

悪のりしてる横島はともかく明日菜は割と横島を意識してる事実に、ハルナはニヤリと意味ありげな表情を見せる

もしかしたら彼女のラブ臭感知が、何かを感知したのかもしれない


37/100ページ
スキ