二年目の春・3

「そうか。 分かった。 よく話してくれたね。」

その後、五月は高畑の元を訪れ涙ながらに超鈴音の計画と自身がそれに関与したことを告白していた。


「すまないね。 僕達もこういう方法しか選べなかった。 本来ならばもっと先に話し合うべきだったんだろうが。」

今も溢れている五月の涙は彼女が何より大切にしていた超鈴音という少女を失ったことによる涙なのか、はたまた自分の犯した罪に対してなのか高畑には分からない。

ただそんな個々の訳を越えた感情の爆発なのかもしれないと思うと、自分達も強行策のような査察ではなく話し合いによる解決を目指すべきだったのではと苦悩する。

まあ話し合いなんかで解決するならこんな事態にはなってないし、超鈴音の危険性を考えると中途半端な話し合いで警戒されて余計なことを企まれると困るので仕方なかったというのが実情なのだが。


「超さんはまだ諦めてません。 これ以上引き返せなくなる前に止めてください。」

「ああ、そのつもりだよ。」

五月からある程度話を聞いた高畑だが、五月が超達と別れてすぐにホテルを出た超鈴音を追う為に五月を部屋に戻らせ自身もホテルを出ていく。



「葉加瀬、本当にいいのカ? ご両親も悲しむヨ。」

「もうそれは言わないで下さい。 ここまで来て全てを忘れてただの学生に戻るなんて嫌です。 足手まといなのは分かってますが連れていって下さい。」

そしてホテルを出た超は葉加瀬と共に空港に急いでいた。

持ち物は修学旅行の荷物として持ってきた最低限の物ばかりで、カシオペアの一号機や未来から持ち込んだ情報などが入ったパソコンくらいしかない。

そう、超鈴音は麻帆良からの完全撤退を決めて修学旅行中のしかも自由行動であるこの日のうちに逃亡しようとしている。

魔法協会に押収されただろう物が気にならないと言えば嘘になるが、元々は僅かな情報と共に時を越えて来ただけに損切りの決断も早かった。

本当は葉加瀬も置いていくつもりだったのだが、五月の離脱を前にしても自分を信じてくれる葉加瀬を超は置いていけなかったのだ。

残れば最低でも未来に関する記憶を消されるのは子供でも分かることであり、葉加瀬は自分を認め必要としてくれた超鈴音に賭けたかった。


「時間が勝負ヨ。 私達の目的を悟られ高畑先生が来る前に飛行機に乗れば私達の勝ちヨ。」

一方の超鈴音は今回は特に策がある訳ではない。

逃げる時は何より素早く逃げるべきだと考え余計な策を練る時間すら惜しいと逃げ出している。

相手は英雄の一人とも言える高畑であるのだから、中途半端な策など役に立たないということもあったが。


「……バカナ。」

「そんな!?」

しかし二人の逃亡劇は空港にたどり着いたところであっさりと終わってしまう。

まるで二人を待ち構えていたかのように空港の入り口で高畑が待っていたのだから。

超鈴音は高畑が何処に居るのか知らなかったが、五月が報告に行ったことで少なからず時間を稼げるかもしれないと期待していたが常時会話を聞かれ見張られてる以上は高畑を出し抜けるはずがなかった。

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