二年目の春・3

「いや~、本場のフラダンスもなかなか良かったわね。」

「っていうかフラダンスって造語だったとは。 一つ賢くなったよ。」

横島達が夕食を食べている頃ハワイは午後の一番暑い時間だった。

まだ春とはいえ南国の強い日差しに少女達は汗ばむほどであるが、少女達はハワイの伝統的なフラダンスを見物し終わっていた。

知ってるようで知らないフラダンスを間近で見物した少女達であるが、ガイドさんによりフラダンスと言うのはいわゆる日本人の造語で正式にはフラという一言で済むと知り驚いていたが。


「それに神様に捧げる踊りだったって聞くと感慨深いものがあるよね。」

「あんた達、神様なんて信じてるの?」

この時フラダンスの歴史なんかも聞いたのだが、フラダンスが神様に捧げる儀式のようなものだと聞いた横島に近い少女達は魔法という歴史の影の部分を加えて想像して感慨深げであった。

しかしこの時神様云々を軽く聞き流していた朝倉は、神様や宗教など信じるようには見えない美砂達が神様を信じてるような言動に違和感を感じたのか不思議そうにそこを突っ込む。


「えっ!? いや~、別に。 信じてる訳じゃないけど居たら面白いかなって。」

対する美砂達はそこを突っ込んで聞かれるとは思わなく少し動揺するも、まさか意外に身近に神様や魔王と知り合いの人が居るとは言えるはずもない。

まあ彼女達が聞いた話はアルテミスという神様が男嫌いだという話だけであり、仮に話しても信じてもらえないだろうが。


「ふーん。」

そんな少し動揺したような美砂達になんか少し気になる反応だなと思う朝倉だが、元が神様の話ではせいぜい占いか宗教絡みの秘密かと当たりをつけるがぶっちゃけ面白い記事に出来そうもないので深く追求することはなかった。

新手の占い師ならば記事に出来ないこともないのだが、宗教になると少々扱うのが面倒なので深入りしたい話ではないらしい。


一方超鈴音は魔法を知っている美砂達を眺めて少し考え込んでいた。

彼女の歴史において美砂達は歴史に名も残らぬ程度の存在でしかなく、桜子の幸運を呼び込む力でさえ超鈴音はこちらに来てから知ったほどだ。

少なからず歴史に名を残す明日菜・木乃香・夕映・のどかの四人や古菲や楓とは対称的な存在であり、完全にノーマークだった面々である。

正直戦力という意味では居ても居なくても変わらないし、むしろ足手まといだとすら思う彼女達を側に置いてる事が横島を未来人だと疑ったことを否定した理由の一つでもあった。

ただ同時に思うのは彼女の歴史でナギやネギが戦いを重ねる中で仲間達が集まったように、美砂達は広い意味で横島に惹かれ集まった仲間なのではと思うのだ。

ならば自分の敵として美砂達もまた立ちふさがるかもしれないと考えてしまう。


「世界がカレを選んだのかもしれないネ。」

何故歴史が変わりネギ・スプリングフィールドが麻帆良に居ないのかは超には分からないが、それでも彼女はネギの代わりに世界の行く末の鍵を握る存在が世界に選ばれたのだと考えている。

それは超自身が何度も子守唄代わりに聞かされたナギやネギのような、世界を変える力を持つ人なのだと超は本能的に理解していた。

超自身は未来の仲間達にナギとネギの血を引く超鈴音にはきっとその力があると言われて育って来たが、過去に来て歴史を直接見て気づいてしまったのだ。

自分にはそんな力がなく横島こそが世界を変える力を持つ者なのだと。


「茶々丸共々相手にとって不足はないネ。」

自分は勝てないかもしれないと超は本能的に悟るが、それでも彼女は試してみたかった。

自分と未来の仲間達の想いと力が、どこまで世界を変える力に対抗出来るのかを試してみたくなっている。

あわよくば自分の土俵に乗せて横島をネギの代わりに世界を救い導く者に仕立てられたらと思案していく超鈴音だが、すでに超鈴音と横島の戦いは始まる前から勝敗が決まってるとは流石に思いもしないようだった。

未来知識と技術という反則技で勝負のルールそのものを変えようとした超鈴音であるが、アシュタロスの遺産というより次元の高い反則技でそれをひっくり返されるという事態など流石に想像出来ないことである。


79/100ページ
スキ