二年目の春・3

その後水平線に夕日が沈む頃になると夕食となるが、このホテルは最上階が宿泊者ならば誰でも入れる展望室となっていてその下にはレストランなど飲食店が何件も入っている。

少女達は同じくハワイに修学旅行に来た他の女子中等部と一緒に地上40階のレストランに来ていた。


「ここも眺めが最高ね!」

レストラン内は多国籍な人が多く日本人もやはり何人か居るものの、特筆すべきは四方がガラス張りでハワイの街やワイキキビーチを見下ろせる景色だろう。

夜景を楽しむためか室内はちょっと薄暗い照明で、ドレスアップでもしないと場違いな雰囲気にも見えるほどだ。

時間的に夕日は沈んだものの西の空はまだ明るく夜景を楽しむには少し早いが、昼と夜の狭間のコントラストはそれはそれで見るものを釘付けにする迫力がある。


「ここフランス料理?」

「そうみたいや。」

さてこの日の夕食はフランス料理になるらしい。

流石にメニューは予め決められてるようだが、周りの客を見てもテーブルマナーは厳格とまでは言えないもののみんな当然のようにやっている。


「私、本格的なフランス料理のお店に来たの初めてだよ。」

「私もですよ。」

ただ修学旅行で来た少女達の半数以上はフランス料理の店に来ること自体が初めてのことで、明日菜と木乃香にあやかと千鶴なんかは何回か経験済みらしいが夕映とのどかは初めてらしく美砂達も円は経験があるらしいが美砂と桜子は初体験のようだ。

尤も横島に近い少女達は時々気が向いたら横島が作るので料理自体は意外に食べているが、マナーに関してはうろ覚えもいいところだった。


「味は美味しいわね!」

「ええ食材使ってるわ。」

一応教師陣が簡単なマナーを説明して夕食となるが、実は修学旅行前に一度授業でテーブルマナーを勉強してはいたが実際使うとは思わずにほとんどうろ覚えだった者が多いらしい。

まあ料理自体は雪広グループが誇るハワイのホテルだけに味は絶品で、昼食に食べたハワイ料理とは全く違った感じの物である。

何人かのクラスメートはフォークとナイフの使い方がぎこちなかったりしているが上手い人は本当に上手く、明日菜や木乃香はマナーよりは料理の味に驚き思わず笑みを溢していた。


「マスターのと味が違うね?」

「そりゃ作る人が違えば味も変わるでしょ。」

メニューに関してはあまり食べなれない少女達の為に選んだらしく割とオーソドックスな料理であったが、横島の料理を食べ慣れて最近口が肥えてきた美砂達も満足そうな表情を見せる。

料理人により変わる微妙な味の違いを感じて興味深げに食べる桜子なんかは、食いしん坊の本領を発揮して違いの原因を考えてるが流石に彼女に分かることではない。


「なんかこんなホテルのレストランで食事してるとセレブにでもなったみたいだね!」

他は全体としてまるでドラマのワンシーンのような夕食の一時に少女達は夢心地といった様子であったが、そこは麻帆良でも個性豊かな3ーAの少女達なだけに時おり笑いが起こり周りに迷惑がかかるからと注意されたりもしていたが。


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