二年目の春・3

「よう! 相変わらず綺麗どころを連れてるな。」

一方麻帆良の横島達は少し早めに店を閉めて久しぶりに外食にと出掛けていた。

横島・タマモ・エヴァ・チャチャゼロ・茶々丸に刀子を加えたメンバーで近所の焼肉屋に来たのだが、店から近いためか顔見知りがあちこちに居て声をかけられている。


「そんなんじゃないっすよ。」

「嘘つけ!」

ご近所の人気者である茶々丸とタマモに大人の女性と言えるエヴァと刀子を連れてれば嫌でも目立つのだろう。

というか横島は未成年とはいえ日頃から周りに女の子ばかり居るので、ある程度年齢を重ねた年配男性からはからかわれることも多い。

まして夕食時の焼肉屋ではお酒もかなり入ってるらしいので尚更だ。


「匂が残る料理は店でやれんからなぁ。」

木乃香達に料理を教えてることもあり自分で作る機会が多い横島であるが、基本的に匂いが残る料理は店では作れないという事情がある。

例外は常連からの要望が多かった土用丑の日のウナギくらいだろう。


「おいおい、あの二人に茶々丸ちゃんって。」

「どういう関係だ?」

焼肉屋自体は近所の店でチェーン店ではなく個人経営の店で炭火焼きの焼肉屋が楽しめる店であった為、店内は焼肉の匂いや煙が染み着くほど充満していた。

そんな店に最近話題の美女であるエヴァと横島の恋人だとの噂が根強い刀子を揃って連れて来れば噂が噂を呼ぶ自体になっていく。

ただでさえ焼肉屋は匂いが服など着くので男女がデートで来るには少しハードルが高いとも言われるのに、噂になるような美女を二人揃って連れて来れば周りは騒ぎたくもなるのだろう。


「なんか妙な注目を集めてるんだけど。」

「ああ、エヴァちゃんが俺の彼女だとか適当なこと言って店の常連をからかったからっすよ。」

そんな周りの反応に若干の戸惑いを見せたのはやはり刀子だった。

エヴァはすでに周りの人間にどう見られようが気にしないようだし、横島に至っては自分が何を言ってもほとんど信じもらえないので半ば諦めの境地に入っている。

ただ教師であり普通の女性である刀子は当然些細な噂も気になるらしい。


「まあ、いいんだけど。」

尤もそこで目くじらをたてて騒ぐこともしないというか出来ないのが刀子であり、すでにいろいろ噂をされてる現状では今更なことでもあった。

元々刀子は関西から派遣されて来たという過去から麻帆良では良くも悪くも目立ち、有ること無いこと噂をされるのは今に始まったことではない。

神鳴流ということから人を斬るのが好きだとか離婚後には刀子が離婚の原因だと決めつけた噂がいろいろ流れたのだ。

まあ噂というなら近右衛門や高畑だって悪い噂はされてるし、人の社会などそんなものだろう。

唯一刀子が意外だったと言えばエヴァがそんな噂を流していることか。

闇の福音と呼ばれ悪党ですら恐れるエヴァが自身をネタにした噂を流して周りや横島の反応を楽しんでるのは意外としか言いようがない。

ただ最近はタマモと並んで高笑いするイメージなんかもあるので、中身は世間のイメージとはかけ離れてることは理解してもいたが。


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