二年目の春・3

「暇ね。」

さて空の旅は乱気流などもなく快適ではあったが、しばらくして機内食を食べ終えると最早することがなくなり明日菜は早くも暇をもて甘し始めていた。

座席には個人用のモニターがあり映画等が見られるが、明日菜はイマイチ見たいものがなく暇らしい。

元々落ち着いてゆっくりしてるよりは動いてる方が性に合ってる上、ここしばらくは年末年始もお盆もタマモやさよと一緒に遊んでることが多く一人でゆっくりすること自体ないことだったのだ。

結果として突然一人で時間を潰せと言われてもやることがないらしい。

ちなみに隣の木乃香はすでに一見すると寝る体勢で目を閉じてリラックスしているが、時々笑みを浮かべて笑いを堪えてる様子から腕時計型通信機で何か見てるようである。

この腕時計型通信機は便利なのは便利なのだが映像などを見る画面は半透明でSFチックな液晶なので、知らない人が居るところで見るには寝たふりが一番見やすいらしい。


「タマちゃんどうしてるかしら?」

窓の外は雲海から海が見下ろせる景色に変わっていたが、代わり映えのしない景色だけにすぐに飽きてくる。

明日菜は今ごろタマモは何してるかなと考えつつ、早くもお土産は何がいいかと考えていくくらいしかすることがなかった。



一方隣の木乃香は明日菜の見立て通り腕時計型通信機で映画を観ていた。

元々幼い頃は一人で遊ぶことが多かった木乃香は一人での時間潰しなどは慣れており、今日はなんとなくこの前見て面白かった横島の世界のドラマである踊るGSの劇場版をゆっくりと堪能している。

ドラマ自体も面白いが普通の日常に霊能という非科学的な力が認められて現代社会に溶け込んでる世界観が木乃香の興味を引いていた。

横島はこんな世界で生きていたんだと考えると余計に興味が沸くらしく、横島が前の世界ではGSかそれに関わる機会があったのだろうなとかいろいろ想像するのが楽しいらしい。

ただ踊るGSのドラマにも魔族は出てきたが神様とか魔王は出てこない。

横島は一体どんなきっかけで魔王やら神様に会ったんだろうと首を傾げたくもなったが。



「うわ~、凄いですね。 落ちたらどうしましょう。 怖いです。」

「落ちたら死んじゃうわね。」

「ハルナさん、私もう死んでるんですけど。 どうなるんでしょう?」

次にさよはハルナの隣に座っていたが子供のように騒ぐさよをハルナがからかったりしていた。

途中で飛行機が落ちたら死んじゃうと脅すようにからかうハルナだが、さよはすでに幽霊なため自分が落ちたらどうなるか本気で不安らしい。


「大丈夫だって。 なんかあれば横島さんが助けに来てくれるわよ。」

流石に苛めたいわけではないので、もしなんかあれば横島が助けに来てくれるからと少しいい加減なフォローをする。

実際飛行機が落ちそうになったりしたら土偶羅による介入が行われるのであながち的外れでもないのだが。

それとハルナはさよが幽霊だという事実が頭になかったらしく、そう言えば幽霊だったんだなとさよから聞いて思い出していたくらいだった。


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