二年目の春・3
「ビールとなんか軽いつまみを頼むよ。」
さてこの日の最後の客はすでに少女達も帰り閉店する間際のあやかの父である雪広政樹であった。
どうも食事会かパーティの帰りらしく少しほろ酔い気味での来店である。
結構食べた帰りのようなので横島は注文のビールとぬか漬けの漬け物を政樹に出し、看板を仕舞うと勧められるままに自身もビールを飲み始めた。
「大変そうっすね。」
「まあね。 収入に見合う働きはしないと。」
少し疲れが見える政樹に横島は大丈夫かなと声をかけるも、ここ最近は忙しいが特に無理をしてる訳ではないと語る。
半分隠居してるような清十郎と違い現役バリバリの社長は端から見るより大変なのだろう。
まして雪広グループは日本の財界でも間違いなく一流な訳だし。
「自分達の生存圏の確保がこれほど大変だったとは思わなかったよ。」
ただ政樹が忙しいのは魔法世界の問題への対策なども重なったからであり、本来魔法協会には直接関与しない立場だった雪広家が近衛家や那波家と共に魔法協会とは別に動かねばならなくなったのだから忙しくもなるだろう。
まして現状では魔法世界の限界を知るのは本当に限られた数人な訳で、今はいかに信頼できる人を集め効率的に対策を進めるかで苦労していた。
「やっぱ土偶羅に言って、もう少しサポートを増やしましょうか?」
政樹は生存圏の確保と言ったが現状の近右衛門を中心にした御三家の方針は、魔法世界の崩壊への対応でしかなく魔法世界への介入は相変わらず検討してないのでその言葉は適切だった。
開拓中の無人惑星を魔法世界崩壊の際の魔法世界人の受け入れ先として準備しなくてはならないし、地球側の世界情勢次第では自分達もまたそちらへ移住しなくてはならなくなる。
まさしく自分達の生存圏の確保の為の準備であるが、無人惑星の開拓を土偶羅とハニワ兵に任せてるにも関わらず近右衛門や政樹達の仕事は泣きたくなるほど多い。
正直無人惑星は切り札であり現時点では日本の麻帆良でこれからも生きて行きたいと考えてるからこそ、様々な可能性と選択肢があり仕事が一向に減らないのだが。
「いや、やれることはやらないとね。 僕達は詠春達に助けられた魔法世界の人のようにはなりたくないからさ。」
一方の横島は近右衛門にしろ政樹にしろもう少し土偶羅にサポートをさせるべきだと思うようだが、それを拒否してるのは他ならぬ彼らである。
可能な限り自分達で出来ることは自分達でしなくては、自分達も英雄という奇跡に甘えて二十年を無駄にした魔法世界と同じ末路を辿るだろうと本気で考えていた。
「横島君ならば助けるのは簡単だろうさ。 だがそこから先の責任の重さは横島君でも他の人でも同じはずだ。 ならば僕達は横島君と共に並ばねばならないんだ。 でなければ僕達や僕達の子供や孫は魔法世界と同じ末路を辿るだろう。 ただでさえ僕達は恵まれてるからね。」
目の前に楽が出来る選択肢がありそれを提供する横島にはそれが簡単なことだと理解しても、それを拒否してその先にある横島の精神的な負担を考えられる政樹に横島は人としては絶対に勝てないと心底思う。
戦いとオカルトにおいては奇跡に奇跡を重ねて来た横島であるが、やはり人としては未熟なのである。
ただこんな大人達が揃っても救えぬ魔法世界の業の深さに横島は何とも言えぬ複雑な心境になっていた。
さてこの日の最後の客はすでに少女達も帰り閉店する間際のあやかの父である雪広政樹であった。
どうも食事会かパーティの帰りらしく少しほろ酔い気味での来店である。
結構食べた帰りのようなので横島は注文のビールとぬか漬けの漬け物を政樹に出し、看板を仕舞うと勧められるままに自身もビールを飲み始めた。
「大変そうっすね。」
「まあね。 収入に見合う働きはしないと。」
少し疲れが見える政樹に横島は大丈夫かなと声をかけるも、ここ最近は忙しいが特に無理をしてる訳ではないと語る。
半分隠居してるような清十郎と違い現役バリバリの社長は端から見るより大変なのだろう。
まして雪広グループは日本の財界でも間違いなく一流な訳だし。
「自分達の生存圏の確保がこれほど大変だったとは思わなかったよ。」
ただ政樹が忙しいのは魔法世界の問題への対策なども重なったからであり、本来魔法協会には直接関与しない立場だった雪広家が近衛家や那波家と共に魔法協会とは別に動かねばならなくなったのだから忙しくもなるだろう。
まして現状では魔法世界の限界を知るのは本当に限られた数人な訳で、今はいかに信頼できる人を集め効率的に対策を進めるかで苦労していた。
「やっぱ土偶羅に言って、もう少しサポートを増やしましょうか?」
政樹は生存圏の確保と言ったが現状の近右衛門を中心にした御三家の方針は、魔法世界の崩壊への対応でしかなく魔法世界への介入は相変わらず検討してないのでその言葉は適切だった。
開拓中の無人惑星を魔法世界崩壊の際の魔法世界人の受け入れ先として準備しなくてはならないし、地球側の世界情勢次第では自分達もまたそちらへ移住しなくてはならなくなる。
まさしく自分達の生存圏の確保の為の準備であるが、無人惑星の開拓を土偶羅とハニワ兵に任せてるにも関わらず近右衛門や政樹達の仕事は泣きたくなるほど多い。
正直無人惑星は切り札であり現時点では日本の麻帆良でこれからも生きて行きたいと考えてるからこそ、様々な可能性と選択肢があり仕事が一向に減らないのだが。
「いや、やれることはやらないとね。 僕達は詠春達に助けられた魔法世界の人のようにはなりたくないからさ。」
一方の横島は近右衛門にしろ政樹にしろもう少し土偶羅にサポートをさせるべきだと思うようだが、それを拒否してるのは他ならぬ彼らである。
可能な限り自分達で出来ることは自分達でしなくては、自分達も英雄という奇跡に甘えて二十年を無駄にした魔法世界と同じ末路を辿るだろうと本気で考えていた。
「横島君ならば助けるのは簡単だろうさ。 だがそこから先の責任の重さは横島君でも他の人でも同じはずだ。 ならば僕達は横島君と共に並ばねばならないんだ。 でなければ僕達や僕達の子供や孫は魔法世界と同じ末路を辿るだろう。 ただでさえ僕達は恵まれてるからね。」
目の前に楽が出来る選択肢がありそれを提供する横島にはそれが簡単なことだと理解しても、それを拒否してその先にある横島の精神的な負担を考えられる政樹に横島は人としては絶対に勝てないと心底思う。
戦いとオカルトにおいては奇跡に奇跡を重ねて来た横島であるが、やはり人としては未熟なのである。
ただこんな大人達が揃っても救えぬ魔法世界の業の深さに横島は何とも言えぬ複雑な心境になっていた。