二年目の春・3

さてこの日の午後には麻帆良亭の坂本夫妻が店を訪れていた。

午前中には前回の春祭りでのイベント参加の報告を聞き、売り上げを麻帆良学園奨学金基金へ寄付する場に立ち会ったりしていたようである。

その様子は麻帆良学園の報道部のみならず地元のマスコミも取材していて、坂本夫妻はインタビューなどに答えていたが当然横島は同席してないがあやかは今回食材の無償提供した雪広グループの社員と共に同席していた。

実は横島にも同席をとの話が主宰サークルからあったようだが、元々マスコミにいい印象がない上に今回は手伝いだからという理由で同席してなくあやかが横島の代わりも勤めることになったようだった。

ただ横島に関しては麻帆良カレーの開発者として麻帆良カレー実行委員会が正式提供店を発表した際に名前が公式に出てしまったので、そちら絡みで取材なんかの依頼がここのところ来ていたが以前から付き合いのある学園の報道部以外は雪広グループを通して欲しいと相変わらず門前払いをしている。

中には取材ついでに宣伝してやると上から目線で言ってきたマスコミも居たことが横島の態度を更に硬化させており、雪広グループと横島側が話し合い報道部の取材内容を雪広グループ側から公式発表という形で取材申込みをしたマスコミに配る形に落ち着いていた。

正直横島はかつての人類の敵と報道された時からマスコミ嫌いであり、今回は木乃香達とあやかが横島をなだめて報道部が取材した内容を配ることを認めさせたといった方が正しいだろう。


「元気に育ってるわね。 今日は特に元気な芽を残して間引きしましょうね。」

少し話が逸れたが坂本夫妻の夫は次回の麻帆良亭の営業日の相談をする為に横島や夕映と話をして居たが、庭ではさよとタマモと一緒に坂本夫妻の妻が野菜や花の種を撒いた畑でたくさん発芽した芽を間引きしようとしていた。


「えっ!? ぬいちゃうの?」

「あんまり芽が多すぎると大きくなれないの。 美味しい野菜や綺麗な花を育てるのは大変なのよ。」

タマモはせっかくたくさん出た芽を抜くと言うとビックリしてしまうが、坂本夫妻の妻は一つ一つの作業の意味を分かりやすく説明していきタマモを納得させていく。

庭の猫たちも何してるのと言わんばかりに集まって来て眺めてる中、坂本夫妻の妻はタマモとさよと楽しげに庭の手入れをしていくことになる。


「こちらも反響が凄いよ。 あれからも何件か話を貰ったが、正直困惑するものもある。」

一方坂本夫妻の夫の方だが麻帆良亭の限定営業日はそろそろ慣れて来たので特に問題もなく話が進むが、坂本夫妻の元には春祭り以降は坂本夫妻に直接依頼が届くようにもなったらしい。

以前夕映達を通して依頼された麻帆良亭の歴史の編纂などをどうしようかとか考えていた最中にも関わらず、麻帆良祭への協力依頼やゲストとしてイベントの審査員などを依頼されたりしてるようであった。


「流石に坂本さんのクラスになると大変っすね。」

「私達も横島さんどころか木乃香や私とのどかまでいろいろ依頼が来ていたのですが、基本的に全て断ったんですよ。 学校のクラスの出し物に、麻帆良カレーや納涼祭関連もありますから正直依頼を受ける余裕がないですから。」

ちなみに麻帆良祭関連で様々な依頼が来てるのは横島達も同じであり、横島ばかりか木乃香にもいろいろな依頼が来ているし夕映とのどかにまで数は少ないが麻帆良祭関連の依頼が舞い込んでいる。

横島はまるで他人事のように困惑する坂本夫妻の夫の話を聞いていたが、横島を含めて木乃香達は忙しい上に下手に依頼を受けると麻帆良祭が仕事ばかりになるので断っていた。

まあ横島達の場合は麻帆良カレーや納涼祭なんかも麻帆良祭で宣伝になるイベントをやろうという計画があるので現状でも十分忙しく、横島に至ってはスケジュールを夕映に押さえられていて麻帆良祭で勝手な約束をしないようにとだいぶ前から釘を刺されているが。


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