二年目の春・3
一方この頃のメガロメセンブリア元老院は少し不穏な空気に包まれていた。
昨年夏に失脚したクルト・ゲーデルが懲りもせずにまたコソコソと動いていることを上層部は当然掴んでいるのだ。
「数年は大人しくしてると思ったがな。」
「高畑・T・タカミチより堪え性がないとは。 案外高畑の方が政治家には向いてるかもしれん。」
かつての恩人の息子を利用しようとして元老院の中の敵味方問わず支持を失ったクルトが、一年もたたないうちに動いている事実にほとんどの者はただ呆れていた。
大人しく議員として地道な活動をすればいずれ復権も不可能ではないほどの経歴と実力があるにも関わらず、舌の先も乾かぬうちにコソコソが動いたのでは周りの誰も信じられないのが当然だろう。
何より相対的に比べられる高畑があの一件以来メガロメセンブリアとの協力を止めて麻帆良を動かぬことで、余計にクルトの落ち着きの無さが目立っている。
「やはり、連中が健在で公に見つかったのはクルトの策の可能性が高いか。」
ネギの魔法学校卒業後の受け入れ先への介入の失敗を待つかのように露見したフェイト健在の情報は、クルトが黒幕だという説が半ば事実のように魔法世界では見られていた。
ここ数年見つかってなかった秘密結社完全なる世界の中枢の人物があまりにタイミングよく見つかり、それに合わせるかのごとく高畑が動かなくなったのだからそう考える方が自然だった。
横島のような異質な第三者が介入したなどという事実は、あまりに荒唐無稽過ぎて誰も思いもしないのは当たり前であろう。
「あの男は何を狙っているのだ? 赤き翼とあの女の名誉回復か?」
「さあな。 案外この世界でも救いたいのかもしれんが、あの男は我々を敵だと認識してるからな。 我々とあの男では目指す理想が違いすぎる。」
頭が切れ有能なのは誰もが認めるが、些か切れすぎて自分や周りを傷付けるというのがクルトの元老院での評価だ。
実際クルトの失脚に巻き込まれて失脚した仲間は多く、彼らはクルトの浅はかな策に人生を狂わされたと恨んでる者すら居る。
赤き翼の支持者達も依然としてクルトを突き放しており、現在クルトが動き関わっているのは数少ないクルトの同志と元老院と影で敵対してるような連中でしかない。
中にはメセンブリーナ連合からの独立を願う亜人やウェスペルタティアの独立派組織など、元老院にとって頭の痛い連中と接触を図ろうとしてるようで上層部は神経を尖らせていた。
他の元老院議員とクルトの一番の違いは、クルトには世界を救おうとはしてもメセンブリーナ連合やメガロメセンブリアを守ろうとする意思がないことだった。
国民は守るが国家は守る気がないという国家としては最悪な議員だとも言える。
しかもメガロメセンブリア元老院でさえ魔法世界の真相と限界を知るのは限られているので余計にクルトの行動を理解する者は少なく、汚名を着せられたアリカ元女王と赤き翼の名誉回復が目的ではと考える者も多い。
「そもそも二十歳そこそこの小娘に汚名を着せる必要などなかったのだ。 自ら父王を手にかけたような愚か者などそのうち勝手に自滅したのに。」
ちなみにメガロメセンブリア元老院でのアリカの評価はお世辞にも高いとは言えなかった。
どんな理由があるにせよ穏便に王位を手に入れることも自らの手を汚さぬような謀略を練ることすら出来ないのでは、所詮は世間知らずの小娘だとあざ笑われて当然だろう。
確かに赤き翼と共に秘密結社を追い詰め世界を救ったのはアリカの功績だが、まともな政治など出来るような経験もなければ彼女の祖国にはそんな環境も余裕もない。
第一ウェスペルタティア王国内ですら自らの父を手にかけたアリカの支持者は少数だったのだ。
元老院内部からですらアリカに汚名を着せる必要があったのかとの意見は今も根強い。
クルトに関しても同じで現状ではそのうち自滅すると大半の者は考えていて、クルトがコソコソと動けている理由でもあった。
昨年夏に失脚したクルト・ゲーデルが懲りもせずにまたコソコソと動いていることを上層部は当然掴んでいるのだ。
「数年は大人しくしてると思ったがな。」
「高畑・T・タカミチより堪え性がないとは。 案外高畑の方が政治家には向いてるかもしれん。」
かつての恩人の息子を利用しようとして元老院の中の敵味方問わず支持を失ったクルトが、一年もたたないうちに動いている事実にほとんどの者はただ呆れていた。
大人しく議員として地道な活動をすればいずれ復権も不可能ではないほどの経歴と実力があるにも関わらず、舌の先も乾かぬうちにコソコソが動いたのでは周りの誰も信じられないのが当然だろう。
何より相対的に比べられる高畑があの一件以来メガロメセンブリアとの協力を止めて麻帆良を動かぬことで、余計にクルトの落ち着きの無さが目立っている。
「やはり、連中が健在で公に見つかったのはクルトの策の可能性が高いか。」
ネギの魔法学校卒業後の受け入れ先への介入の失敗を待つかのように露見したフェイト健在の情報は、クルトが黒幕だという説が半ば事実のように魔法世界では見られていた。
ここ数年見つかってなかった秘密結社完全なる世界の中枢の人物があまりにタイミングよく見つかり、それに合わせるかのごとく高畑が動かなくなったのだからそう考える方が自然だった。
横島のような異質な第三者が介入したなどという事実は、あまりに荒唐無稽過ぎて誰も思いもしないのは当たり前であろう。
「あの男は何を狙っているのだ? 赤き翼とあの女の名誉回復か?」
「さあな。 案外この世界でも救いたいのかもしれんが、あの男は我々を敵だと認識してるからな。 我々とあの男では目指す理想が違いすぎる。」
頭が切れ有能なのは誰もが認めるが、些か切れすぎて自分や周りを傷付けるというのがクルトの元老院での評価だ。
実際クルトの失脚に巻き込まれて失脚した仲間は多く、彼らはクルトの浅はかな策に人生を狂わされたと恨んでる者すら居る。
赤き翼の支持者達も依然としてクルトを突き放しており、現在クルトが動き関わっているのは数少ないクルトの同志と元老院と影で敵対してるような連中でしかない。
中にはメセンブリーナ連合からの独立を願う亜人やウェスペルタティアの独立派組織など、元老院にとって頭の痛い連中と接触を図ろうとしてるようで上層部は神経を尖らせていた。
他の元老院議員とクルトの一番の違いは、クルトには世界を救おうとはしてもメセンブリーナ連合やメガロメセンブリアを守ろうとする意思がないことだった。
国民は守るが国家は守る気がないという国家としては最悪な議員だとも言える。
しかもメガロメセンブリア元老院でさえ魔法世界の真相と限界を知るのは限られているので余計にクルトの行動を理解する者は少なく、汚名を着せられたアリカ元女王と赤き翼の名誉回復が目的ではと考える者も多い。
「そもそも二十歳そこそこの小娘に汚名を着せる必要などなかったのだ。 自ら父王を手にかけたような愚か者などそのうち勝手に自滅したのに。」
ちなみにメガロメセンブリア元老院でのアリカの評価はお世辞にも高いとは言えなかった。
どんな理由があるにせよ穏便に王位を手に入れることも自らの手を汚さぬような謀略を練ることすら出来ないのでは、所詮は世間知らずの小娘だとあざ笑われて当然だろう。
確かに赤き翼と共に秘密結社を追い詰め世界を救ったのはアリカの功績だが、まともな政治など出来るような経験もなければ彼女の祖国にはそんな環境も余裕もない。
第一ウェスペルタティア王国内ですら自らの父を手にかけたアリカの支持者は少数だったのだ。
元老院内部からですらアリカに汚名を着せる必要があったのかとの意見は今も根強い。
クルトに関しても同じで現状ではそのうち自滅すると大半の者は考えていて、クルトがコソコソと動けている理由でもあった。