二年目の春・3

「まだ決まらんのか?」

そのまま夜になるとタマモはお風呂上がりに、横島の膝の上に座り込み難しい顔をして腕組みしてうんうんと唸っていた。


「うん、なにがいいかなやむの。」

実はあと数日後の来週の月曜には明日菜の誕生日があり、タマモは明日菜にあげる誕生日プレゼントを悩んでいる。

誕生パーティをやることはタマモの中では規定路線であるものの、プレゼントは毎回のことながら悩むらしい。


「確かにプレゼントは悩むよなぁ。」

さよの誕生日に作ったお揃いのパジャマを着る横島とタマモとさよは完全に家族として違和感が無くなっており、二体のハニワ兵も加わり本当にほのぼのとした一家団らんといった様子だ。

横島は例によって春物のコートでも贈ろうと考えていてすでにハニワ兵に頼んではいるが、流石に毎回同じ誕生日プレゼントも芸がないかと悩んでいる。

可能な限りみんな平等にした方がいいかなと思い今までは同じコートで統一して来たが、面白味がないのではと考えてそろそろ変えてみようかとも考えて始めていた。



「やっぱ、これいいわ。」

「そうね。 全然違う。」

一方同じ頃美砂と円と桜子の三人は風呂上がりに化粧水などでお肌のスキンケアをしていた。

ただし彼女達のスキンケア用品はちょっと変わっていて、本来ならばあるはずの商品名のラベルなんかが貼られてなくデフォルメされたハニワ兵のラベルが張られている。


「買うと高いから助かるわ。」

実は三人は先日横島が魔法協会の新人研修の食事会でシャークティに話した、魔法化粧水などの魔法スキンケア用品を横島から貰って使い始めていたのだ。

シャークティはよく分からない魔法薬に分類される物なので引いたが少女達は横島だし大丈夫だろうとすぐに頼んだらしい。


「結構日焼けするもんね。」

基本的に横島に物をねだることはあまりしないようにしていた美砂達ではあるが、刀子が老化防止魔法薬を貰い始めたことで魔法薬の類いならば頼んでもいいのかなという感じになっていた。

彼女達の場合はチアリーディングなどで屋外で練習や部活の試合の応援に行くこともあって日焼けをするので、スキンケア用品は必需品なようである。

まあ横島からしたら中学生がスキンケア用品必要かと首を傾げてもいたが、元々それらは製造工場もあってハニワ兵達がいつでも量産出来る代物なので欲しいならと気軽にあげていたが。


「そういえば夏にみんなの家族連れて旅行に行こうって話、もう親にした?」

「家は仕事休めるか微妙だって。 それと行っていいのかちょっと迷ってるっぽい。」

横島から貰った魔法のスキンケア用品の効果にご機嫌な三人だが、ふと話は以前ちょっと話していたみんなの家族を旅行に連れて行こうという計画に移る。

それはちょっとした雑談から生まれた話だが、実はその後に雪広さやかとあやかの姉妹の主導で具体的な計画として進みつつあった。

形としては雪広家の別荘かグループが保有する保養所に親しい友人の家族を招待する形として勧められていて、美砂達の家族にもすでに話したらしい。

元は横島から様々な恩恵を受けてることから少しでいいから親にも還元したいとの想いから始まった話だが、横島と少女達の関係を深める為にもいい機会だと雪広家の主導という形で進めていたのだ。

一般家庭からしたら旅行の招待は気後れしてしまうようなことだが、財閥として歴史ある雪広家からするとこの先の将来を考えて是非家族ぐるみでの交流を始めたいと考えてるようである。



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