二年目の春・3

「砂漠って凄いですね。」

「うん。 いってみたい。」

同じ頃、横島宅ではタマモとさよと二体のハニワ兵に加えて遊びに来ているチャチャゼロが寛いでいた。

この日チャチャゼロは最初はノーマルなハニワ兵と酒を飲んでいたが、途中からはお酒初体験の白ハニワ兵にも勧めて三人で酒を飲んでいる。

横島宅では異空間アジトから酒を好きなだけ取り寄せられるので様々な種類の酒が飲み放題なのがいいらしい。


「砂漠ハ大変ダゼ。 昼ハ暑クテ夜ハ寒イカラナ。 俺ハゴ主人ト昔行ッタガ二度ト行キタクネエナ。」

タマモとさよは某国営放送の世界の紀行番組を見ていたが、この日はエジプトのピラミッドや砂漠が入っていて二人は雪山みたいなイメージがあるらしく、一度行ってみたいと口にするも経験者のチャチャゼロが砂漠の過酷さをタマモ達に語って聞かせていた。

エヴァと共に長い年月生きたチャチャゼロはいつの間にか魂を持つ人形と化しており、地球と魔法世界問わず世界各地を放浪しているのでリアルな話が多くこの日もタマモ達は元よりハニワ兵達もチャチャゼロの話に瞳を輝かせて聞いている。


「おさんぽたいへんそうだね。」

「街ナラトモカク砂漠ノ中ヲ散歩ハ普通シネエナ。」

ちなみにタマモはチャチャゼロの砂漠の話に何故か散歩の心配をしてしまい、チャチャゼロに真昼の砂漠ど散歩はしないと言われるとガーンと衝撃を受けてしまう。

タマモ的にはお散歩したり砂浜のように遊べる楽しい場所だと思っていたらしい。

自身の生き甲斐でもある散歩が砂漠では出来ないと聞いたタマモは自然の厳しさからか一瞬真剣な表情になるが、先程から風呂上がりのデザートとして冷えたイチゴを食べてるのですぐに表情が緩んでいた。



「次の魔法も難しいね。」

一方女子寮の中でも比較的広いあやか達の部屋では勉強会と称して木乃香達と美砂達が集まり、刹那を監督者として新しい魔法の練習と気を扱う技術の修行を行っていた。

魔法に関しては難易度の関係から初歩の治癒魔法の練習を行っているが、いくら魔法が一つ使えたからと言って次から次へと魔法を覚えれるはずもなく当然ながら苦戦している。


「西洋魔法はあまり知りませんが、陰陽術も習得までは苦労しますよ。」

一応刹那を監督者にしてはいるものの刹那自身は西洋魔法を教えることは出来ない為、魔法の失敗や暴発など事故がないように見守るしか出来ない。

気の使い方は指導出来るが刹那が使えるのは神鳴流の修行なので厳しい修行であり、あまりお勧め出来ないからと一般的なアドバイスをする程度にしている。

まあ基本的には焦らないようにと声をかけていくくらいで特にやることはなかったが。


「早く空飛びたいなぁ。」

「浮遊や飛行系の術は初歩でも難しいですから。 もう少し魔法に慣れてから練習した方がいいですよ。」

少女達の中で魔法に期待するのはやはり空を飛ぶ魔法のようで、治癒魔法もそこそこ期待はにしてはいるものの期待値は空を飛ぶ魔法には敵わないらしい。


「魔法が普及しない訳よね。 この時計の機能みたいに簡単に魔法使えたらいいのに。」

「あまり簡単に魔法が使えたらそれはそれで問題になりますからね。 時計の魔法機能は絶対秘密ですよ。」

なんというか魔法をちょっとした特技のレベルまであっさりと落とす横島と、人生を賭けるほど時間と情熱を必要とする他の魔法使いでは基本的な価値観がまるで違うことを少女達は改めて痛感する。

ぶっちゃけみんなが魔法を使えると世の中もっと便利になるのではと思う者が横島の周りにすら居るが、魔法やその歴史を知るとそう簡単にいかないのは誰でも分かることだった。

ともかく少女達は暇な時間を見つけてはコツコツと魔法の練習に励んでいた。


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