二年目の春・3

「こっちの海に来ると日本の海行けなくなるね。」

「ここの海は綺麗やもんな~。」

さて桜子と美砂のアタックをなんとか耐えた横島であるが、対する少女達は横島の件は気になりつつも純粋に海を楽しんでいた。

この日の海は前回泳ぎに来た一月よりもかなりハニワ兵が多いものの、真夏の日本の海水浴場ほど混雑はしてない。

砂浜でビーチバレーやビーチサッカーなど楽しむハニワ兵も居てたりして結構賑やかだが、砂浜と海は関東近郊の海水浴場と違い綺麗だし何より見知らぬ男が居ないことが少女達にとっては気楽なようである。

プライベートビーチならぬプライベートワールドなので今更だが、こういう快適な海水浴を覚えると遊ぶ場所がない砂浜と芋洗い状態の海には行きたいと思わなくはなっていた。


「でもこういう贅沢をしちゃうと、ちょっと後が怖いかも。」

「そうですね。 確かに慣れるのはどうかと思うです。」

ただ少女達の中にはそんな環境や感覚が贅沢だと感じ、それに慣れてしまうのが怖いと感じる者も少なからず存在する。

のどかや夕映はそれが顕著なのだが、ならば異空間アジトに遊びに来るのを止めるかと言われるとそれは嫌だった。

ちなみにのどかは給料調整がされているので放っておくだけで雪ダルマ式に金持ちになってしまうのだが、本人はそれを知らないので自分には一生お金持ちは縁がないと思っているが。


「ねえねえ、いいもの見つけたよ!」

「何それ、水鉄砲?」

「うん! みんなで遊ぼ!」

そのまましばらくは泳いだり遊んだりビーチチェアでくつろいだりと各自自由にしていたが、タマモを連れた桜子が海の家で貸し出しているちょっと大きめの水鉄砲を発見すると近くに居たたくさんのハニワ兵を交えてみんなで遊ぶことになる。


「お前らこんなもんまで作ってたんか? ってかサバゲーみたいなスポーツにしてるし。」

ただしハニワ兵達はただ水鉄砲で遊ぶ訳ではなく、雪合戦やササバイバルゲームのようなルールを作り遊んでいた。

水鉄砲のオモチャもどうやら横島は作らせた記憶がないようなのでハニワ兵達が自分達の意思で作ったオリジナルアイテムらしい。

ルールに関しては二チームに別れて戦うが両腕と胸に紙で出来た的を用意してそれを完全に濡らすか落としたら戦線離脱で、最終的には紙で出来た相手チーム旗を濡らすか取ったら勝ちというものである。

しかもゲーム専用の盾や陣地まであるし、審判のハニワ兵も置くらしいのでほとんどスポーツに近かった。

ちなみに人間用の紙で出来た的がないので急遽作ったのだが、的の大きさは統一したものの身体の大きさの違いから幾分ハニワ兵に有利なルールかもしれない。


「うわっ、エヴァちゃんと刀子さんは敵かよ。」

「マスター達固めるとそれだけで勝負ついちゃうでしょ。 マスターは桜咲さんとエヴァちゃんは刀子さんと組めばある程度バランス取れるし。」

組分けに関しては魔法関係者は最初に戦力バランスを考えて組分けされた結果、横島はエヴァと刀子が敵に回り顔をしかめていたが。

あとの少女達とハニワ兵達は完全にじゃんけんで組分けするも、一チーム16人とかなりの人数になり砂浜の三分の一ほど使うかなり大きなフィールドが用意された。


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