二年目の春・3

「改めて見るとあすなちゃんも大きくなったわね。」

「いいんちょとケンカした時よく仲裁をしてくれましたよね。 そしたらいいんちょったら、私のお姉ちゃんなのにって拗ねちゃって。」

「そんなこともあったわね。」

その後横島は刀子達の力の使い方を教え始めるが、明日菜はふと昔を思い出したのかさやかと懐かしそうにおしゃべりをしていた。

実はこの二人は明日菜が麻帆良に来た頃からの付き合いがあり、明日菜や木乃香が雪広邸で遊んだりした時には一緒に遊んだりしたほど親しい関係だった。

明日菜とあやかがケンカ友達なのに対してさやかはいい意味で二人のお姉ちゃんだったらしく、明日菜とさやかがあまりに仲良くなりすぎてあやかが嫉妬したことなんかもあるらしい。

小さい頃は記憶の封印や過去の影響から少し変わっていた子供の明日菜が、素直になついた数少ない少し年上の子供がさやかだったりする。


「そういえば今でも護身用やってるんですか? 確か合気柔術でしたっけ?」

「ええ、続けてるわ。 文武両道が家訓だから。 それとこれは魔法を知ってから聞いた話だけど私とあやかちゃんの先生は魔法使いだったの。 両親としては立場上最低限の護身術は覚えさせたかったみたい。」

二人は暇なのかそのまま昔話に花を咲かせると目の前の修行を見ているからか、ふと雪広姉妹が習う護身術の話になっていた。

実は雪広姉妹は幼い頃から合気柔術を習っており姉妹共にかなりの腕前である。

一応雪広家の家訓が文武両道であるからと言うのが理由にあるらしいが、資産家の子として最低限の護身術は習わせたいという両親の意向もあったらしい。


「ほう、貴様は合気柔術をやるのか。 ならば少し私の相手もしてもらおうか。」

「おいおい流石にちょっと……。」

「心配するな。 私も純粋な合気柔術でやる。 百年ほど前にチンチクリンなおっさんに習って以来研鑽を積んでいるからな。」

そんな和やかにおしゃべりをしていた明日菜とさやかだが、刀子達の修行を見てるのに飽きたのかエヴァが興味を持ってしまいさやかに手合わせをしようと持ちかける。

流石にどうかと思った横島が口を挟み高畑も驚くが、エヴァ同じ系統の技で勝負するといい横島を黙らせた。


「よろしくお願いいたします。」

あとはさやか本人の意思なのだが彼女が意外にも乗り気になった為に、急遽エヴァ対雪広さやかの手合わせが行われることになる。

さやかは伝説にまでなったエヴァが同じ系統の合気柔術を使うと聞き一体どれほどの実力なのか純粋に興味があった。

ここのところ横島が非常識過ぎてあまり目立ってないがエヴァもまた生ける伝説であり、まさかそんな彼女が相手をしてくれるとは思わず喜びたいほどなのだ。


「えっ!?」

「うむ、一般人の手習いにしてはよくやる。 いいぞ。」

しかしエヴァとさやかの手合わせもまた、昨日の横島と高畑や刀子の手合わせ同様に次元の違うレベルに驚かされることになる。

パワーもスピードもどちらかといえばさやかが上だし、恐らくさやかは一般人の同年代ではかなり強い方であろう。

だが二人には圧倒的な技術の差があり、さやかはあっさりと投げ飛ばされてしまった。


「流石は闇の福音ってとこね。」

魔力を一切使わぬ体術故に一般人のさやかにもその凄さが身をもって理解出来るし、それを見ていた刀子と刹那は純粋な体術ですら自分達はエヴァに勝てない事実に実力の差を改めて痛感することになる。



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