麻帆良祭への道

「うーん、少し冷静になった方がいいかもしれんな。 君の恋愛運には波乱が見える」

桜子達が遊びに行くからと居なくなると横島再び客の相手をしており、頼まれて占いをしていた

横島が本格的に占いをしていたのは三月の短い間だけなのだが、今だに占いを求めて来る客も居る

人数自体はそれほど来ないが、それでもあの時からの常連や噂を聞き付けた人が尋ねて来るのだ

基本的に飲み物でも頼んでくれればサービスで占ってる為、気軽に頼みやすいようである


「やっぱり別れた方がいいのかなぁ」

「それを決めるのは君自身がすることだよ。 ただ占いの結果はあんまり良くない」

浮気性の彼氏と別れるべきか許すべきかと悩む女子高生に、横島は言葉を選びつつ否定的な方に導く

実は彼女の彼氏には他に本命の彼女が居て、彼女はキープと言うかセフレ扱いなのが横島には見えていた

それほど強力に占った訳ではないが、相手があまりに酷い為に見えてしまったらしい


「マスターの占い百発百中なんだって? 私の友達おかげで彼氏出来たって言ってたもん」

「百発百中だったら店辞めて占いを本業にするよ。 ただ、君の中じゃ答えは決まってるんだろ? あくまで俺の個人的な意見だけど、それでいいと思うよ」

横島は決して強制しないし安易な答えは示さないが、何度か占いに来る子は次第に悩みやら人生相談を始める子も居る

そんな子の相談を横島は嫌がりもせずに聞くため、占いより長くなる子も結構多い


「うん……、とりあえず冷静に考えてみるね」

結局彼女はこの場では決断は出来ないが、横島はそれでいいと考えている

彼女の決断が近いことを霊感が感じていたのだから



「休日なのに店番頼んで悪かったな」

横島が女子高生と占いしていたのは普段は使わない個室だった

日頃から相手が他人に聞かれたくないと言った場合は個室で占いをしてるのだが、今日は少し店内に客が多かったので遊びに来ていた木乃香に店番を頼んで占いをしていたのだ

普段はあまり忙しい時間は断る時もあるのだが、今日の子は暇になるまで待ってると言い出したので木乃香に頼んでいたのである


「やっぱり凄いなー 帰る時の顔が全然違うわ~」

最近ますます料理を覚えた為に日替わりメニュー以外は横島が居なくても作れる木乃香は、立派に店番を勤めていた

そんな木乃香は占いをした女子高生の帰る時の表情に注目している

木乃香自身も占いをするので、悩みを抱えた人の帰る時の表情が気になるらしい

自分の時と横島の時では相手の満足度がまるで違う事実に気付いている


「占いの結果をどう伝えるかによっても、相手の受け取り方は違うんだよ。 木乃香ちゃんの場合は占いよりも、いろんな人生経験を積めば分かるさ」

自分の占いと横島の占いの違いに悩む木乃香に、横島は占い以外の違いがあると教えていた

横島と木乃香の違いは占いの的中率もそうだが、相手を見抜く能力と相手に伝える能力の違いも大きかったのである


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