二年目の春・2

「魔法協会もなんというか大学部あたりと変わりませんね。」

一方少女達と刀子は古菲と高畑の勝負の周りに集まる人だかりを見ながら、今まで少し離れた場所から感じていた魔法協会のあまり良くないイメージとは違いリアルな等身大の魔法協会に少し親近感を感じていた。


「今日は特にそんな人達が多いのよ。 中には魔法協会の人にも滅多に姿を見せないような人も居るわ。」

実際この日の食事会に来てる関係者はほぼすべてが新人を歓迎しようという人達なので、社交的で新人に優しい人ばかりなのである。

ただ魔法協会を通して見ると必ずしもそういう人ばかりではなく、魔法の秘匿すら守れないような子供にはあまり関わりたくないと避ける関係者も居ない訳ではない。

加えて関東魔法協会は他の魔法協会と比べると開放的だが、それでも閉鎖的な考えの持ち主は居るし社交性の問題からもあまり他者と関わりたがらない人は一定の数で存在した。

近右衛門に近い刀子ですら全ての魔法協会員を知る訳ではなく会ったことがない関係者は多いのが実情のようだ。


「昔は派閥があり大変だったと聞きますが?」

「らしいわね。 もう二十年も昔の話だし私も噂以上は知らないわ。」

だが魔法協会が現状のように社交的になったのはここ二十年の影響らしく、夕映やのどかにあやかなどが噂を聞いたかつての魔法協会はメガロメセンブリア系魔法使いと日本人魔法使いの静かなる闘争の歴史だったらしい。

まあメガロメセンブリア系魔法使いも一部を除けば良心的で素晴らしい魔法使いが多かったが、根本的な思想や価値観の違いから対立することがよくあったようである。

基本的に魔法協会は麻帆良学園という表の顔があるが、魔法使いの教育なんかに関してはよく対立した歴史があった。

表では日本式の教育をしながらも裏ではメガロメセンブリア式の教育をする魔法協会に反発する日本人は多かったのだ。

ちなみに少し話が逸れるがそんなかつての麻帆良学園は日本の教育界、取り分け日教祖とは壊滅的なほど関係が悪かったなんて過去もある。

理由は様々あり一概には言えないが地球側では政治活動はしないという制約がある魔法協会にとって、自分達の学園にて政治活動をする上に世界的に見て考え方が片寄っている日教祖は好ましい存在ではなかった。

結果としては日教祖との関係が断絶していて実は近右衛門が実権を握って以降も、関係修復は行われずその関係は変わらず断絶したままになっている。

まあ麻帆良学園側には学園の大学部に教育学部もあり日教祖が必要ないという事情もあるが、ただ政治的な活動をしない教育界の組織なんかとは当然交流はあるし関係も必ずしも悪くはないので今のところ問題はないらしい。


「昔は魔法協会に限らず過激な学生闘争とかあった時代なのよ。 今じゃ考えられないけどね。」

いろいろ話をしていくが少女達の中でも知性派は特に過去の魔法協会の問題なんかも興味があるようで詳しく知りたいようだが、実は刀子の方が過去の問題に興味がないので噂程度しか知らずに逆に夕映達の方が詳しい話も現状ではすでにある。

あまり明らかになってはないが刀子の本質も高畑なんかと同じ武闘派であり、戦い以外の小難しい歴史や過去には興味がなかった。


「正直、私は学園長先生に恩があるから魔法協会に居るだけでそれ以上じゃないのよ。 みんなに教えてるのも言い方を変えれば変な野心とかないからだし。 分かるでしょ? 私の立場で変な野心とか持つとどうなるか。」

なんというか少女達に対して変に格好つける必要が最近特に無くなっている刀子は、自分の立場の重要性とそこに自分が居る意味を正直にぶっちゃけてしまう。

すでに話に興味がない少女達は別の話で盛り上がっているが、刀子はそんな少女達を見て思わず笑みを浮かべて知性派の少女達が考えるほど魔法協会は面倒な場所ではないと告げていた。





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