麻帆良祭への道

「モテモテだったわねー」

横島と絡んでいた女子高生達が帰ると、奥の席に座って横島と女子高生達の会話を聞いていた美砂・円とビッケとクッキを連れた桜子がやってくる


「からかわれてるだけだろうが」

ニヤニヤとからかうような美砂に横島は若干苦笑いを浮かべて答えるが、三人はそれでも意味ありげな笑顔を浮かべていた


「マスターって軽い割にがっつかないのよね。 手慣れてるって感じ?」

「案外純情なのかも……」

美砂に続き円と桜子も横島を探るようなからかうような言葉を口にするが、横島は遊んでと駆け寄って来たビッケとクッキに遊ばれている


「こら爪を立てるな、ちゃんと遊んでやるからそんな興奮するなって」

まだ子猫のビッケとクッキはとにかく好奇心旺盛で遊ぶのが好きらしく、横島が暇そうになると遊んで欲しいと絡んで来るのだ

横島は基本的に暇ならば二匹の好きなように付き合っているが、一応最低限のしつけはしているらしい



「なんで彼女作らないんだろうね。 結構モテるのに……」

「誰か好きな人でもいるんじゃないの? 桜子、あんた聞いてない?」

子猫と戯れる横島を見つつヒソヒソと話をする三人だったが、美砂と円は横島の恋愛事情が気になるらしい

二人は横島とよくメールする桜子に何か知らないかと聞くが、流石に桜子もその手の話を知るはずはなかった

横島と親しいのは木乃香達も同じなのだが、比較的大人びており恋愛に積極的なのは彼女達三人の方である

身近な男性の中でも評価が高い横島の恋愛事情に彼女達は興味津々だった


「好きな人は聞いたことないよ。 女の子は好きだっては言ってた気がするけど……」

「あんたね、それは普通なのよ。 問題は相手なのあ・い・て!」

ヒソヒソ話のはずがテンションが上がる美砂は、次第に声が大きくなり賑やかにしゃべってしまう


「よし、いい子だな~」

一方横島は元々ヒソヒソ話とはいえ近いため、聞くつもりがなくても全て聞こえていた

しかし答えようがない話の内容だけに、ビッケとクッキと遊びつつ聞かなかった事にするしかないようである



「そうだ、麻帆良祭のメニューなんか決まりました?」

大声で横島の話をする美砂と桜子に、円は慌てた様子で横島に話しかけて話を変えていた

流石に横島が困ってるのを感じたらしい


「いろいろ考えてはいるよ。 そうだ、ちょうど試作用に準備したやつあるから味見してみるか?」

「賛成! 味見したい」

昨日考えて深夜に準備した試作メニューの味見の話をすると、桜子は真っ先に手を挙げていた

いろいろな料理を作る横島の試作メニューなだけに過大な期待をしてるようである


「そんな凝った料理じゃないぞ。 料理が苦手な人でも作れるやつだからな」

過大な期待をする桜子に横島は僅かに困った表情を見せるが、そのまま三人を連れて厨房に入っていく



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