二年目の春・2

公会堂のホール内には下は初等部の生徒から上は二十代後半くらいの大人も居て、麻帆良学園の制服はもちろんながらスーツを着た大人もちらほらと目につく。

もちろん既に魔法協会に所属する新人の師匠や保護者らしき大人も低年齢の参加者と一緒に来てるようだ。


「結構人が居るわね。」

「魔法使いって意外に多いみたいですよ。」

意外に多い人に驚く一行だが現在関東魔法協会では所属する人員や協力者の数は機密保持の観点から公表してなく、内部の人間でも一般的にはおおよその数でしか知らないが、この日公会堂に来ている関係者は新人と付き添いを合わせて二百人を越えてるようである。

何人かは横島の店にも来る人も居て挨拶を交わしながら研修が始まるのを待つが、なんとなく流れで豪徳寺達と近くに座ることになった横島達はやはり目立っていた。


「なんと、もう魔法使えるアルか!?」

「もちろんよ。 凄いでしょ!」

そんな中で今まで互いに隠していた魔法について話してもいいとなったからか、古菲はクラスメートである少女達の実力を知りたがりすでに全員魔法を使えると知ると驚きの表情を浮かべる。

古菲自身は一応高畑から魔法について聞いた時に少し練習したらしいが、いまいちやる気が起きずに現在は気の修行だけしかしてないらしい。


「せっかくだから魔法を使ってみるアル。」

「あなた達ここで魔法を使ってはダメですよ。 火災報知器に反応するかもしれませんから。」

なお古菲は魔法を使って見せてと美砂達にせがむが、すぐにあやかにより公会堂内での魔法の使用はダメだと注意される。

まだ種火の魔法しか使えない少女達であるので火災報知器のあるような公共施設での魔法なんて使っていい訳がなかった。


「ウム、じゃあマスターならどうネ?」

「横島さんもダメです! 小さい子が真似したらどうするんですか!?」

あやかに注意されて残念そうにする古菲であるが彼女はめげずに今度は横島に何か魔法を見せて欲しいと言い出すと、横島は深く考えずに何か見せようとするも夕映とあやかに止められてしまう。

会場には初等部の子達も結構多く誰かが魔法なんて使い始めると真似したり騒ぎになるのは、考えなくても分かるはずなのだが。

ちなみに横島が見せようとしたのは、小さな物をちょっとだけ浮かすこの世界の初歩の西洋魔法である。

系統はほうきなどで空を飛ぶ魔法の一種でスプーンくらいの物を十センチほど浮かせるだけであるが、同じ初歩の魔法の中では難しい部類に入る魔法だった。


「皆さん本日は関東魔法協会の新人研修にようこそ。 本日ここには今年度から魔法協会に所属してくれる人も居れば協会外で協力してくれる人も来ております。 個人または企業の支援者の方も来ていることをご理解の上でお願いします。」

何かと騒がしい横島の周囲だが新人研修が始まると流石に静かとなり、ステージで挨拶を始める魔法協会員の話を聞く。

新人研修とは言うがこの日はやはり説明会と言った方が適切なようでまずは今日参加する新人達自身の説明から入る。

新人の六割は魔法協会に所属する者だが四割ほどは外部協力者がいるらしく、その四割の中で魔法や気など使えるのは横島達と古菲に豪徳寺達くらいで後は支援企業などから来た非魔法使いの関係者になるらしい。


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