二年目の春・2

「みんなでおでかけだね!」

「楽しみだね。」

さてそれから数日が過ぎて麻帆良学園の入学式が一通り終わった金曜の夜は魔法協会の新人研修の日である。

いつもより少し早めに夕食を食べた横島はタマモとさよに木乃香達・美砂達・ハルナ・あやか・千鶴・夏美といういつもの面々を連れて会場となる麻帆良市公会堂に向かっていた。


「タマちゃんもさよさんも今日は楽しいイベントではないですよ。」

一応魔法協会の新人研修だと伝えているはずなのだが、タマモやさよに桜子なんかは何があるんだろうと楽しみにしてるようである。

夕映は事前に説明したはずなのにと軽く首をかしげるも、彼女達は何処に行くのでも楽しめるだけだったりする。

ちなみに今日の新人研修は表向き近右衛門の独演会という名目で公会堂を押さえているが、元々公会堂も学園所有の建物なので名目は本当に何でもいいらしい。


「あっ!」

そのまま何事もなくこの夜は人払いの魔法で一般人が近寄らないようにしている公会堂に入った横島達だが、ここで予期せぬ人達と出会ってしまう。

横島と少女達に加えて相手も同じタイミングで驚きの声をハモると、互いに何でここに居るのと不思議そうな顔をしていた。


「ここに来たということは君達も裏の人間だったのか。」

「アイヤー、みんな私に隠してたアルネ!!」

横島達が出会った相手は豪徳寺と友人達と古菲のバトルジャンキー達である。

豪徳寺達は横島の店の常連であり古菲は言うまでもなく木乃香達のクラスメートだ。

まさかこんな場所で会うなんてとお互い驚いていたが、古菲はクラスメートが何人もいるのに自分が外されていたことに怒っていた。

実は以前にも少し説明したが昨年の龍宮神社の夏祭りで気について知った古菲と元々独学で気を習得していた豪徳寺達には、高畑が彼ら以外にも気などの不思議な力を使う人達が居ると明かして力の隠匿を頼む代わりに時々気の指導をしたりしていたのだ。

その後彼らは高畑に指導を受ける傍らでお礼にと高畑の魔法協会での仕事である荒事を手伝うなどしていて、信頼を得た結果今年度から魔法協会の協力者に正式に加わるらしい。


「隠してたのはお互い様じゃん。」

「ウチらが魔法を知ったのは今年に入ってからや。 横島さんは元々魔法使いやったみたいやけど。」

なんというか公会堂のロビーにはこの日の研修に参加する者達や受け入れる魔法協会の関係者でごった返していたが、麻帆良でも有数の有名人であるバトルジャンキー組と横島達の出会いは人一倍目立ち注目を集めてしまう。

古菲は木乃香達が魔法を隠してたことを怒っていたが、そもそも先に裏のことを知ったのが古菲であることを突っ込まれるとそれはそうだったかとあっさりと納得していた。

やはり彼女は現役のバカレンジャーである。


「いや~、争い事はあんまり得意じゃなくて。」

「前々から何処か気になる人だったが、まさかな。」

一方昨年からやんわりと避けてきたバトルジャンキー達とよりによって魔法協会のイベント出会うという事実に、横島は相変わらず腰が低くヘラヘラと対応しているがどうやら豪徳寺達は以前から横島に少し目を付けていたらしい。

どうも体育祭の翌日の営業で木乃香の料理大会優勝スイーツを販売していた時に、 横島がクレーマーに対応したの様子が豪徳寺達は見た目と違う何かを感じたとのこと。

横島は内心で強い相手を探す嗅覚は妖怪並かよと若干失礼なことを思いつつも、なんとか彼らに実力を隠そうとあがくことになる。


「古菲強いもんね。 そりゃ魔法協会にスカウトされるわ。」

「私なんてまだまだアル。 高畑センセの足元にも及ばないネ。」

そのままなんとなく横島達はバトルジャンキー達と一緒に公会堂の中に入るが、強い相手と戦う喜びを嬉々と語り強くなりたいと熱く語る彼らに少女達はこんな魔法関係者も居るのかと自分達との違いに新鮮な様子で話を聞いていた。




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