二年目の春・2

「家族構成はご両親と兄に祖父母は全員健在と。 過去を遡っても魔法関係との関わりはほぼなしって、本当に一般家庭よね。 あんな乱暴な方法で魔法の公開なんてしたらご両親と兄は間違いなく普通に生きてけないわ。」

超鈴音の計画について刀子は馬鹿じゃないのとしか思えないのが本音にある。

関西呪術協会でも中堅から末端に近い家に生まれ東西の狭間で生きてきた刀子からすると、大多数の魔法関係者はどれだけ苦労をして生きているのか超は理解してないと憤りを感じてならない。

そしてそんな超に協力する葉加瀬に関しては問題の重大さを理解してるのか不思議だった。


「恨みを買うでしょうからね。 よくて人質、悪ければ……。」

科学に魂を売ったなどと本人は口にしてるらしいが、超の計画が成功しようと失敗しようと露見した時点で協力者である葉加瀬の家族に親戚縁者は今までの生活が出来なくなる可能性が高い。

刀子は多少言葉を選んでいたが横島は人質にされるか殺されると自分の首を切るようなアクション付きではっきりと答える。

仮に彼女達の計画が成功したら葉加瀬に近い関係者は計画の犠牲になった魔法関係者の恨みを買い、超や葉加瀬を誘き出すエサに使われるか報復として殺されるだろうと刀子と横島は見ていた。

そしてテロ行為とも言える計画の協力者の肉親を進んで助ける者はいないだろう。

まあ超鈴音のことだから協力者の身内は計画成功の暁にはすぐに匿う予定のようだが、それでも葉加瀬の身内は一生隠れて生きねばならなくはなる。

ちなみに計画が失敗した場合には未来に帰るつもりらしいので葉加瀬や協力者の身内なんかは放置するらしい。

計画が失敗しても場合によっては葉加瀬や協力した者の身内は狙われる危険があるのだが……。


「学園長がある程度守ってくれることアテにしてるのかしら? もしそれならずいぶん勝手な話よね。」

「たぶんそうじゃないっすか。 勝手と言えば勝手っすね。 俺が学園長先生ならぶちギレそうっすよ。」

なお計画が失敗した場合のその後はデータとしての情報がなく今は超の頭の中にしかないが、刀子は超が後始末を近右衛門に期待してるような気がして横島もそれを肯定する。

ある意味近右衛門の欠点とも言えることだが、近右衛門には組織のトップとしては些か非情さが足りない。

普通の魔法協会のトップならば超のような計画に協力したら未遂で終わっても殺されてもおかしくないし、どんなに甘くても記憶は消去されて本人や身内は生涯監視下に置かれるだろう。

だが近右衛門は彼女を許して逆に守ってやる方に動くような気がした。

それは近右衛門の器の大きさの結果かもしれないが、今回の件のように見抜かれて利用される危険もある。


「私、安易に命を賭けてとかいう人あまり好きじゃないのよね。 彼女のように科学に魂を売るなんて発言も冗談でも好きになれないわ。」

近右衛門や横島は超はともかく葉加瀬はあまり警戒してない分だけ気にかけていなかったが、刀子は自分の行動の意味も理解してないような葉加瀬に苛立ちを感じてるようだった。

家族が自分の行動でどうなるのかも考えられないような人間に何が出来るのかとも思うのかもしれない。


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