麻帆良祭への道
近右衛門と茶々丸が帰った後、横島はいつもと同じように店を開店していた
この日は休日であり朝は客が少なかったが、九時を過ぎた頃から学生達が集まりおしゃべりをしたりしながら楽しげに騒いでいる
「マスター、今度どっか連れてって下さいよ」
「いいぞ、どこでも連れて行ってやるよ」
「じゃあ、海外旅行がいい!」
週末の店内はいつも賑やかで、横島は顔見知りの女の子達と普通に話したりすることも多い
ノリのいい子はフレンドリーな感じで横島におねだりする子もたまにいる
どうも横島は金持ちだとの噂が独り歩きしてるらしく、結構色気を見せながらおねだりされたりすることも割とよくあった
「ブッ!! さすがに海外は彼氏と行けよ」
「えー、いいじゃん。 マスターもフリーなんでしょ? 私はオッケーよ」
麻帆良に来て横島が一番学んだのは女の子のことかもしれない
かつてあまりのモテなさに血の涙まで流した横島が、麻帆良では割と普通にモテるのだから驚きを通り越してカルチャーショックである
モテる原因の大半が金持ちの噂なので本人は複雑な気分ではあるのだが、それでもモテて悪い気をするはずもなかった
実は横島本人はあまり気付いてないが、かつてあった煩悩丸出し状態が無くなった為に金持ち説を抜いても割と好感度が高い
気さくな性格に料理も上手く優しい横島は、金持ちの噂も加わり結構言い寄られることがあるのだ
「いつも言ってるが俺は金持ちじゃないぞ。 金持ちだったら毎日遊んで暮らすわ」
「別にどっちでもいいわよ。 マスター金持ちになりそうだし」
横島本人は基本的に金持ち説を否定するが、その割には噂が消えないのは横島のどこか浮世離れしたところが原因だろう
「モテない男からかって楽しいか?」
「もちろん楽しいわよ。 誰がマスターを落とすか賭けてるもの」
冗談とも本気とも取れる形で意味ありげな笑みを浮かべる女の子に、横島は渇いた笑いを浮かべるしか出来なかった
(親父なら間違いなく落とせる女の子なんだろうな……)
目の前の女子高生を見てる横島は、ふと父親である大樹を思い出す
人の心の隙を突くような大樹はよく口説きよくモテていた
(俺も親父みたいに生きたかったな)
大樹の生き方を思い出す横島は普通の人生に思いを馳せて、僅かに苦笑いを浮かべる
昔ならば喜んで飛び掛かっていたのだろうが、いつの間にかそれを素直に出来なくなった自分に複雑な心境だった
別に一生恋人を作らないと決めた訳でもないし、かつての恋人や仲間を転生させるまで一人で待つと決めた訳でもない
ただ……、今一歩踏み込むことが出来なかっただけなのだ
「マスター、聞いてるの? こんな美女を前に他のこと考えるなんて貴方だけよ」
「悪い悪い、見とれてただけだって」
僅かに不満そうに頬を膨らませる女の子に、横島はちょっと困ったように謝り周りの子達は面白そうに笑っていく
賑やかな休日の店内から笑い声が途切れることはないのかもしれない
この日は休日であり朝は客が少なかったが、九時を過ぎた頃から学生達が集まりおしゃべりをしたりしながら楽しげに騒いでいる
「マスター、今度どっか連れてって下さいよ」
「いいぞ、どこでも連れて行ってやるよ」
「じゃあ、海外旅行がいい!」
週末の店内はいつも賑やかで、横島は顔見知りの女の子達と普通に話したりすることも多い
ノリのいい子はフレンドリーな感じで横島におねだりする子もたまにいる
どうも横島は金持ちだとの噂が独り歩きしてるらしく、結構色気を見せながらおねだりされたりすることも割とよくあった
「ブッ!! さすがに海外は彼氏と行けよ」
「えー、いいじゃん。 マスターもフリーなんでしょ? 私はオッケーよ」
麻帆良に来て横島が一番学んだのは女の子のことかもしれない
かつてあまりのモテなさに血の涙まで流した横島が、麻帆良では割と普通にモテるのだから驚きを通り越してカルチャーショックである
モテる原因の大半が金持ちの噂なので本人は複雑な気分ではあるのだが、それでもモテて悪い気をするはずもなかった
実は横島本人はあまり気付いてないが、かつてあった煩悩丸出し状態が無くなった為に金持ち説を抜いても割と好感度が高い
気さくな性格に料理も上手く優しい横島は、金持ちの噂も加わり結構言い寄られることがあるのだ
「いつも言ってるが俺は金持ちじゃないぞ。 金持ちだったら毎日遊んで暮らすわ」
「別にどっちでもいいわよ。 マスター金持ちになりそうだし」
横島本人は基本的に金持ち説を否定するが、その割には噂が消えないのは横島のどこか浮世離れしたところが原因だろう
「モテない男からかって楽しいか?」
「もちろん楽しいわよ。 誰がマスターを落とすか賭けてるもの」
冗談とも本気とも取れる形で意味ありげな笑みを浮かべる女の子に、横島は渇いた笑いを浮かべるしか出来なかった
(親父なら間違いなく落とせる女の子なんだろうな……)
目の前の女子高生を見てる横島は、ふと父親である大樹を思い出す
人の心の隙を突くような大樹はよく口説きよくモテていた
(俺も親父みたいに生きたかったな)
大樹の生き方を思い出す横島は普通の人生に思いを馳せて、僅かに苦笑いを浮かべる
昔ならば喜んで飛び掛かっていたのだろうが、いつの間にかそれを素直に出来なくなった自分に複雑な心境だった
別に一生恋人を作らないと決めた訳でもないし、かつての恋人や仲間を転生させるまで一人で待つと決めた訳でもない
ただ……、今一歩踏み込むことが出来なかっただけなのだ
「マスター、聞いてるの? こんな美女を前に他のこと考えるなんて貴方だけよ」
「悪い悪い、見とれてただけだって」
僅かに不満そうに頬を膨らませる女の子に、横島はちょっと困ったように謝り周りの子達は面白そうに笑っていく
賑やかな休日の店内から笑い声が途切れることはないのかもしれない