麻帆良祭への道
次の日、近右衛門が目を覚ましたのは見知らぬ部屋だった
飾り気などまるでなく無機質なパイプベッドが一つだけの部屋は、どこかの施設かと疑いたくなるほど寂しく感じる
「ワシは一体……」
何故こんな見知らぬ部屋に居るのか昨日の記憶を思い出していく近右衛門だったが、しばらくして横島の店で飲んでいた事実を思い出す
そのまま近右衛門は部屋を出てリビングらしき部屋に向かうが、こちらも家具らしい家具はなく床に置かれたテレビや食事に使うだろう小さなテーブルが一台あるだけである
部屋は割と綺麗だが、なんというか生活感のない印象が強い
「だいぶ成長しましたね」
「まあな、初めての割には順調だよ。 この調子で行けば夏には野菜がたくさん取れるな」
どこからともなく話し声が聞こえて来た近右衛門が窓から外に視線を向けると、庭で横島と茶々丸が楽しげに雑談していた
元々植物を育てる事には興味がなかった茶々丸だったが、毎朝横島の庭で成長していく植物を見ているうちに興味が出てきたらしい
「小さい頃アサガオを育ててた時を思い出すよ。 毎日成長していくの観察してるのは結構楽しかったからな」
「アサガオですか?」
「俺が子供の頃は学校の授業かなんかで育ててたんだよ。 そっちの花壇の方にちょっと植えてみたから、そのうち花を咲かせるだろうさ」
家庭菜園スペース以外にも花壇スペースがあり、少し前にはチューリップが綺麗な花を咲かせていた
横島はそんな花壇の端の方にアサガオも植えていたようだ
「学園長先生……?」
そんな時に茶々丸は2階の窓から外を眺める近右衛門を見つけて驚きの声を上げる
何故近右衛門が居るのか理解出来なかったようだ
「ああ、昨日の夜に店で酔い潰れてな。 家も知らんし泊めたんだわ。 頭大丈夫っすかー?」
茶々丸に事情を説明しつつ近右衛門に声をかける横島だが、その表情が昨日より幾分いい事にホッとする
「すまんのう、まさか酔い潰れるとは…… 何十年ぶりじゃろうか」
そのまま庭に降りて来た近右衛門だが、流石に酔い潰れた事が恥ずかしいらしく苦笑いを浮かべていた
立場上酔い潰れるほど飲むなどなかったのだろう
「俺としてはどうせ酔い潰れてくれるなら美女の方がいいんっすけどね~」
「次に酔い潰れる時はワシも美女の店にするわい」
「そういう問題でしょうか?」
どうせ酔い潰れるなら美女がいいと強い口調で言い切る横島に、近右衛門もまた次は美女の店にすると言い放つ
茶々丸はどこかズレた二人の会話に思わずツッコミを入れるが、二人は笑ってるだけだった
(飲んだせいかスッキリしたわい)
そのままもう一度礼を言って帰る近右衛門だったが、今日はいつになくスッキリした感じなことに気付く
この先の問題を考えると頭痛がしそうだが、何故か不思議とやれるような気力がみなぎる気がした
(あの調子なら大丈夫だな)
一方横島は近右衛門を見送りつつ、その明るい表情に安堵している
実はタマモの前世の術は横島自身が使ったことがない術も多く、ちゃんと効果があるかちょっと心配だったのだ
飾り気などまるでなく無機質なパイプベッドが一つだけの部屋は、どこかの施設かと疑いたくなるほど寂しく感じる
「ワシは一体……」
何故こんな見知らぬ部屋に居るのか昨日の記憶を思い出していく近右衛門だったが、しばらくして横島の店で飲んでいた事実を思い出す
そのまま近右衛門は部屋を出てリビングらしき部屋に向かうが、こちらも家具らしい家具はなく床に置かれたテレビや食事に使うだろう小さなテーブルが一台あるだけである
部屋は割と綺麗だが、なんというか生活感のない印象が強い
「だいぶ成長しましたね」
「まあな、初めての割には順調だよ。 この調子で行けば夏には野菜がたくさん取れるな」
どこからともなく話し声が聞こえて来た近右衛門が窓から外に視線を向けると、庭で横島と茶々丸が楽しげに雑談していた
元々植物を育てる事には興味がなかった茶々丸だったが、毎朝横島の庭で成長していく植物を見ているうちに興味が出てきたらしい
「小さい頃アサガオを育ててた時を思い出すよ。 毎日成長していくの観察してるのは結構楽しかったからな」
「アサガオですか?」
「俺が子供の頃は学校の授業かなんかで育ててたんだよ。 そっちの花壇の方にちょっと植えてみたから、そのうち花を咲かせるだろうさ」
家庭菜園スペース以外にも花壇スペースがあり、少し前にはチューリップが綺麗な花を咲かせていた
横島はそんな花壇の端の方にアサガオも植えていたようだ
「学園長先生……?」
そんな時に茶々丸は2階の窓から外を眺める近右衛門を見つけて驚きの声を上げる
何故近右衛門が居るのか理解出来なかったようだ
「ああ、昨日の夜に店で酔い潰れてな。 家も知らんし泊めたんだわ。 頭大丈夫っすかー?」
茶々丸に事情を説明しつつ近右衛門に声をかける横島だが、その表情が昨日より幾分いい事にホッとする
「すまんのう、まさか酔い潰れるとは…… 何十年ぶりじゃろうか」
そのまま庭に降りて来た近右衛門だが、流石に酔い潰れた事が恥ずかしいらしく苦笑いを浮かべていた
立場上酔い潰れるほど飲むなどなかったのだろう
「俺としてはどうせ酔い潰れてくれるなら美女の方がいいんっすけどね~」
「次に酔い潰れる時はワシも美女の店にするわい」
「そういう問題でしょうか?」
どうせ酔い潰れるなら美女がいいと強い口調で言い切る横島に、近右衛門もまた次は美女の店にすると言い放つ
茶々丸はどこかズレた二人の会話に思わずツッコミを入れるが、二人は笑ってるだけだった
(飲んだせいかスッキリしたわい)
そのままもう一度礼を言って帰る近右衛門だったが、今日はいつになくスッキリした感じなことに気付く
この先の問題を考えると頭痛がしそうだが、何故か不思議とやれるような気力がみなぎる気がした
(あの調子なら大丈夫だな)
一方横島は近右衛門を見送りつつ、その明るい表情に安堵している
実はタマモの前世の術は横島自身が使ったことがない術も多く、ちゃんと効果があるかちょっと心配だったのだ