二年目の春・2

一方昼時の横島の店では昼食を食べているお客さんでそこそこ賑わっていた。

最近のお昼時は和食と洋食のランチと麻帆良カレーが主な食事のメニューとして人気で、体育祭で木乃香が作ったスイーツランチも手間の関係から数量限定ながら根強い人気がある。

スイーツランチに関しては体育祭で木乃香が作ったメニューの中では一番売り方を選ぶという制約もあり、和栗のショートケーキやリンゴのロールケーキに比べると他店で販売出来なく地味であったがそのおかげで割と自由に出来るメニューであった。

結果として横島と木乃香で季節感を取り入れたりと、何度かメニューを改良したり増やしたりしながら現在に至っていて存続している。


「お代置いていくよ。」

「まいどあり!」

お客さんの数は全体を通してみると今も徐々に増加傾向にあるものの、相変わらず日中の店は横島とタマモしか居ないのでお昼時は常連が避けるので意外に混雑してない。

しかも平日の日中は横島が忙しかったりすると常連はテーブルに代金を置いて横島が確認する前に帰る人も居るし、中には料理を運ぶのを手伝ってくれたり皿を片付けて厨房まで運んでくれる人もいた。

これらは全て横島が認めてることではあるが元々横島はお客さんとの垣根が低いというかほとんどないので、いつの間にか周りが手伝ってくれている。

まあ開店当初から明日菜達を筆頭にバイトでないのに手伝ってくれていた少女達が居たこともあったし、年配者なんかは横島の適当な経営を心配して商売のやり方を教えてくれた人も居たのでその流れが続いていると言えるが。


「うんとね、きょうのカレーはしんじゃががいっぱいなんだよ!」

なおタマモも忙しい時は相変わらずお手伝いしていて、常連の人なんかにはきちんとオススメのメニューを宣伝までしている。

加えてタマモが散歩の途中で仲良くなった人なんかが来てくれることもあり、名実共に看板娘としてみんなに認められつつあった。


「さあ、俺達も飯にするか。」

「うん!」

そしてお昼時が過ぎて店が落ち着くと横島とタマモはようやくお昼にするが、基本的にはお昼は店でこの日に提供しているメニューなど有り合わせの物で済ませることが多い。

雨などで暇な日はタマモのリクエストを聞き別途作ることもあるが。

ちなみにタマモの好物であるいなり寿司は現在隠れメニューとして密かに人気であるが、流石に毎日は作らないので常連でもあったらラッキーだという扱いになっている。


「午後は桜の押し花でも作ろうか? 他にも保存出来る方法見つけたし試してみてもいいしな。」

お昼時を過ぎた静かな店内で美味しそうに料理を頬張るタマモに横島は幸せを感じつつ、午後にはタマモが取ってきた散った桜の花でタマモと押し花やプリザーブドフラワーなどの花の保存方法を試してみることにする。

木乃香達や千鶴なんかからはあんまり甘やかし過ぎてはダメだと最近注意されてる横島であるが、相変わらずタマモには甘く木乃香達がバランスを取るように躾をしていた。

その後横島とタマモは桜の花をいろいろな方法で保存していくが、途中でその手の趣味がある年配の常連なんかが加わって賑やかな午後になることになる。


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